RECORD
テンタティブへ
それと、術式が精密に組み込まれたスクロールが二枚添付されている。
路地裏で何が起きたかは知っている?
フィリア様にエルマーがちょっかいをかけたのだけれども、その様子をせっかくだからお伝えするわ。
エルマーは喋れないけど、私には何となく言いたいことは分かるから。
あなたに全部報告しておくわね。
そのスクロールは、記録した音声の再生装置のようなもの。
原理を話すと長くなるし、そんなものはあなたに説明する必要もないでしょう?
『Iesias』と唱えれば発動するからよろしくね
一枚目のスクロール
こつ、こつ、こつ、こつ。
「――――!!」
「…………、……なんだ、エルマーか」
「別に、怖いなら振り抜けば良いのに。
なぜここにいるの。何に怯えているの。」
「……あー、その。
武器を向けちまったことは気にしないでくれよ。
つってもお前は全然動じてねぇか。そうだよな、俺だけだもんな……」
「…『俺だけ。』死への恐怖心がない事か。
その体を精一杯震わせて、死を克服しようとこんな所に?
……随分、可愛いコトをしているのね」
クスクス
「ああ、でも、そんな顔をしないで欲しい。
まるでのうさぎのような貴女を追いかけ回してしまいたくなる。」
ガリ、ガリリ。
「…………、……エル、マー……?」
「……や、」
「…ああ、怯えてる。でも、恐怖を克服したいのならそれこそ耐えてもらわなきゃ。
私はまだ何もしていない。あの男が隠した部位を見せてすらない。
怯えないで、フィリア。これくらいどうって事ないでしょう?」
こつ、こつ。かぱ… がぱり…
「やっ、ぁ――」
がり、がつっ。
……くすくす、くすくす。
二枚目のスクロール
「…左手の赤血、あら、脇腹も?
もしかして、野うさぎにでも襲われた?」
くすくす、くすくす。
「ええ、ええ、知っているとも。
あの子の獣を呼び覚ましたのは私なのだから」
こつ、かつかつ。
「いいものは見られた。人から獣へ。恐怖に耐えかね、見るもの全てを敵とする野生の兎。
ヒトというだけでも弱者なのに、さらに兎なんて。可哀想なあまりに笑ってしまう」
「楽しかったか?ええとても。隅っこで子供のように震えてるんですもの。
ここには怖いものがいる、教えるためにちょっと脅かしただけですのに」
こつこつ。こつこつ。くす。
「本音を言うなら、もう少しあの子が
恐怖心に駆られて周りを傷つけるさまを見たかったのに。ここには優しいヒトが多いものね」