RECORD
バイト百景 その7
「脱稿おめでとうございます!」
「今日はリベレの奢りだぜ」
「えっ? 年上で美人の店長が当然奢りますよね?」
「アタシを図に乗らせたいなら
昨日父さんって呼んだのは間違いだったな」
「ちっ……」
「まあまあ……。
でもありがとう。
私が稼げるようになったらふたりにお返しするね」
「ちゃんと食って体力つけろよ」
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「リベレってすごく食べるの丁寧だね」
「父が礼儀に厳しい人だったんですよね。
僕の世界、食糧事情が合理化されて、
合成食品がほとんどだったんですが、
そんな中だからこそ食に感謝をしろと」
「ディストピア飯……ってこと!?」
「小説のネタになりそうだからって
目を輝かせないでください」
「その魚の小骨を綺麗に取るのは
その生活で身につくことなんか?」
「マナーの類は、こっちに来てから練習しました。
向こうの食事、栄養を管理されたチルドトレーか、
もしくは好みの食感のレーションに
VR上で味覚を再現させて食べるのがほとんどで」
「練習までして行儀よく食いてえんだ……」
「想像つかないけど、手料理とかもしないんだっけ」
「食材や調理器具の入手が難しいので、
ハードルの高い趣味ですね。うちの母みたいに頑張っても、
そんなに美味しいものができるわけではありませんし……」
「こっちの食事はどれも美味しいので、
僕も自分で作ろうとしても外食に逃げてしまいますね」
「お母さんの味すらも……。
お家帰った時、こっちの美味しいご飯が恋しくなっちゃうね」
「そうですね……」
「!? そうじゃないですか!!
僕あの何もかもそんなに美味しくないところに
帰省するんでした!! 急に嫌になってきました」
「そんなに?」
「飯がまずいからこっちに永住したんですよ!!」
「かわいそ。なんか保存食持ってく?
土産にもなるしさ」
「店長さん、買い物めんどくさがるからいつも缶詰料理だもんね」
「サーディンは何にでも使えるし酒のアテにも最高だかんね」
「考えときます……」