RECORD

Eno.276 リベレの記録

バイト百景 その7

~アリーナゾーン・併設酒場にて~

「脱稿おめでとうございます!」


「今日はリベレの奢りだぜ」


「えっ? 年上で美人の店長が当然奢りますよね?」


「アタシを図に乗らせたいなら
 昨日父さんって呼んだのは間違いだったな」


「ちっ……」


「まあまあ……。
 でもありがとう。
 私が稼げるようになったらふたりにお返しするね」


「ちゃんと食って体力つけろよ」



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「リベレってすごく食べるの丁寧だね」


「父が礼儀に厳しい人だったんですよね。
 僕の世界、食糧事情が合理化されて、
 合成食品がほとんどだったんですが、
 そんな中だからこそ食に感謝をしろと」


「ディストピア飯……ってこと!?」


「小説のネタになりそうだからって
 目を輝かせないでください」


「その魚の小骨を綺麗に取るのは
 その生活で身につくことなんか?」


「マナーの類は、こっちに来てから練習しました。
 向こうの食事、栄養を管理されたチルドトレーか、
 もしくは好みの食感のレーションに
 VR上で味覚を再現させて食べるのがほとんどで」


「練習までして行儀よく食いてえんだ……」


「想像つかないけど、手料理とかもしないんだっけ」


「食材や調理器具の入手が難しいので、
 ハードルの高い趣味ですね。うちの母みたいに頑張っても、
 そんなに美味しいものができるわけではありませんし……」


「こっちの食事はどれも美味しいので、
 僕も自分で作ろうとしても外食に逃げてしまいますね」


「お母さんの味すらも……。
 お家帰った時、こっちの美味しいご飯が恋しくなっちゃうね」


「そうですね……」


「!? そうじゃないですか!!
 僕あの何もかもそんなに美味しくないところに
 帰省するんでした!! 急に嫌になってきました」


「そんなに?」


「飯がまずいからこっちに永住したんですよ!!」


「かわいそ。なんか保存食持ってく?
 土産にもなるしさ」


「店長さん、買い物めんどくさがるからいつも缶詰料理だもんね」


「サーディンは何にでも使えるし酒のアテにも最高だかんね」


「考えときます……」