RECORD

Eno.8 スフェーンの記録

story:有るそれに関しての話

「私たちは存在を失った」



否、失わされた。


あの機械が支配したから、私たちは殺された!

ああ、実際は殺されていない。
首の皮一枚がつながっている。
星と宇宙の間に私たちは住み着いた。
乖離された私たちは、空へと逃げ込んだのだ。
もはや地表は私たちを必要とせず、彼らは私たちを忘れている。
信仰は地に着くものであり、血に着くものである。
私たちは降り立つ大地を失い、降り立つ社を失い、そして迎える人々を失った。
もはや受け入れるのは不可視の空中だけであった。
星の声は私たちの透明な体に響いてやかましいことこの上ない。
不快だった。私たちはこの星のものであったものだから。
この星を支配するものであったから。
故の不快。
外側からの乱入者が不快でないはずがなかった。
それは明確な外側であり、害するものであるのは明白である。
知らない、知り得ない、資料がない。
未知に足を踏み入れるのではない。
インベーダー。
鼓膜越しの頭の侵略であった。

しかして、首のかわ一枚で繋がっている延命を無駄にするわけではない。
私たちは空からかつての人々に訴えかけている。
星の声に紛れ込ませている。

微々たるものだ。これは星の声を阻害し、しかし自分の声が届くものでもない。
けれど、星の声が聞こえるのなら、私たちの声が聞こえるのなら、それは他の人間より許容範囲、キャパが大きいということなのだろう。
未知を受け止める領域、肥大。

だから、力を貸し与えている。

人間にとっては大きすぎる力であり、“すぐに溢れるだろうもの”を。
しかし、干渉できない私たちにとっては、それしかできないのであった。

その力を持って、平定を。
君たちには授けられた意味などわからないのだろうが。
私たちは望んでいる。


君たちの支配の脱出を。

私たちは信仰を失った。
私たちは祈りを失い、それは機械へとすり替えられた。
私たちは人を失った。


復権をもとめるから、人を利用している。



「しかしまあ、問題ないだろう」



「元々は、私たちの支配下に置かれているのだから」



「雷、水、風」



「全て名ありの貸しものだ。力の一端を貸し与えている」



「──また、得てして例外は存在する」



「創作物の概念とて、長年語り継がれれば」



「神という名前を受け、何千年と後にも語られる名前であるから」



どんでん返し、超展開」



「それは今回、目に力を分け与えた」



「目が合う人の見通しをめちゃくちゃにするから、視界の回転が起こるのだ」



「見る人の過去を無理やり捻じ曲げて結果だけを引き摺り出すから、どんでん返しと呼ばれるのだ」




──機械仕掛け




ああ、それだけ。
ただそれだけだよ。

励めよ、人の子たちよ。

神の支援であるからゆえ。

星の声に耐えろよ。そして、神の声にも耐えろよ。

だから意味がわからなくなっていた。




神は死んでいる。間違いなく死んでいる。

神は生きている。虎視眈々と狙っている。

人は、その元に。






──世界の秘密を解き明かせないのだ。誰も彼も。
そしてきかいもまたそうであり。


──だから、もう、あとは彼に視点を絞ろう。

この土地に踏み入れる直前の、彼の話を描こう。


──終幕を。