RECORD
Eno.63 マートルの記録
オブスキュラ崩壊
積乱雲の中から黒竜が飛来し、オブスキュラは混乱に包まれた。
従来のように上空を飛ぶのではなく遂に王国を攻撃し始めたのだ。
黒竜の背には眩いばかりの光輪を持つナニカが乗っており、これが地上の魔導士と同じように音を紡ぎ始めた。
どこまでも届きそうな鈴の音が響き渡り、これを中心に広がった光の輪に我々は警戒心を抱いた。
しかし迫りくるそれに逃れるは難しく、触れた兵士は光の粒子になって消えてしまったではないか!
黒竜はまるで何かを探すように建物を破壊する。
ナニカは断続的に輪を生み出し、兵士を、国民を、光の粒へと変えていく。
目の前で光の粒になった者は「あたたかい」と残し消えて我々は成す術もなく逃げまどう。
上空から歌声が聞こえ、つられるように空を見上げると幾つもの火球が地上に向かって落ちていく。
竜の息吹かと思っていたが違う。
あれは、堕ちる星。
空に輝いていた光が消えて一つ一つの欠片として降り注ぐ。
流星群のようで、目が離せない。
私の前にも、光が──────
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崩壊した王城の地下、今にも消えそうな声が耳を掠める。
瓦礫と瓦礫の狭間をこじ開けるように父が体ごと突撃し、空間が開けていく。
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地面が割れて中に入っていた水が溢れて小さな湖のようになっていた。
その中央に巨大な鯨、母がぷかりと浮かんでいる。
急いで駆け寄って私は治癒魔法を唱えた。
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巨大な目が開かれる。
深海のように暗く、濃い青。これが、オブスキュラの色だった。
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父も私も母の願いを察した。
子供たち、母から生み出された食用人間を救ってほしいのだと。
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父は翼をはためかせ、天井の大穴を潜り抜け地上へと飛んでいく。
今にも命を終えてしまいそうな母の体に私の全てを注ぎ込まんと光を使うしかなかった。
地上で父が何をしたかは知らない。
私が母を連れて大穴から顔を出した時、目の前に広がる景色は暗闇だった。
ざぁ、とどこからか音が聞こえる。
私の後ろ、隣から、ざぁざぁと波の引く音が聞こえる。
オブスキュラに海が帰ってきた。
従来のように上空を飛ぶのではなく遂に王国を攻撃し始めたのだ。
黒竜の背には眩いばかりの光輪を持つナニカが乗っており、これが地上の魔導士と同じように音を紡ぎ始めた。
どこまでも届きそうな鈴の音が響き渡り、これを中心に広がった光の輪に我々は警戒心を抱いた。
しかし迫りくるそれに逃れるは難しく、触れた兵士は光の粒子になって消えてしまったではないか!
黒竜はまるで何かを探すように建物を破壊する。
ナニカは断続的に輪を生み出し、兵士を、国民を、光の粒へと変えていく。
目の前で光の粒になった者は「あたたかい」と残し消えて我々は成す術もなく逃げまどう。
上空から歌声が聞こえ、つられるように空を見上げると幾つもの火球が地上に向かって落ちていく。
竜の息吹かと思っていたが違う。
あれは、堕ちる星。
空に輝いていた光が消えて一つ一つの欠片として降り注ぐ。
流星群のようで、目が離せない。
私の前にも、光が──────
「お父様!お母様の声が聞こえます!」
「あぁ──、掴まってろ!」
崩壊した王城の地下、今にも消えそうな声が耳を掠める。
瓦礫と瓦礫の狭間をこじ開けるように父が体ごと突撃し、空間が開けていく。
「っマール!」
地面が割れて中に入っていた水が溢れて小さな湖のようになっていた。
その中央に巨大な鯨、母がぷかりと浮かんでいる。
急いで駆け寄って私は治癒魔法を唱えた。
「マール、マール…!
遅れてすまない、今までよく耐えた……!」
「お母様っ…!目を開けてください!」
「………ヴェ、ルト…ル…、マ…ト、ル…?」
巨大な目が開かれる。
深海のように暗く、濃い青。これが、オブスキュラの色だった。
「マール…!」
「あ なた…、ごめ、な さい… に げられ、なか っ た…」
「そんな、
いいんだよ、君は何も悪くない、」
「おね が こど も た、ちを」
父も私も母の願いを察した。
子供たち、母から生み出された食用人間を救ってほしいのだと。
「……あぁ、分かったよ マール。
それが君の望みなら」
「マートル、……マールを、頼んだ」
「──はい。
お父様もお気をつけて」
父は翼をはためかせ、天井の大穴を潜り抜け地上へと飛んでいく。
今にも命を終えてしまいそうな母の体に私の全てを注ぎ込まんと光を使うしかなかった。
地上で父が何をしたかは知らない。
私が母を連れて大穴から顔を出した時、目の前に広がる景色は暗闇だった。
ざぁ、とどこからか音が聞こえる。
私の後ろ、隣から、ざぁざぁと波の引く音が聞こえる。
オブスキュラに海が帰ってきた。