RECORD
Eno.48 Siana Lanusの記録
悪夢を見るのは珍しい事では無かった。
過去を想起する夢の殆どが、悪夢と呼べてしまうから。
仲間が居て目標があって充実していた日々すら、今の自分には悪夢だ。
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視界を塗りつぶした赤で
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世界が変わる事を望んでいた。
人にとってよりよい世になる事を望んでいた。
そのために尽くす事を信仰とした。
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それが事実だった
使命感を帯びた意志は行き場を失った。
それだけの事だ。
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悪夢を見るのは珍しい事では無かった。
過去を想起する夢の殆どが、悪夢と呼べてしまうから。
仲間が居て目標があって充実していた日々すら、今の自分には悪夢だ。
ころ、と転がった少女の瞳と目が合った。
噴き出した血と身体の倒れる音。ひどく静かな雑音だった。
たった一瞬の事だったのに、忘れられていない。
あれほどフラウィウスで練習したはずの“人を殺す感触”が、
何故か、あの一回が、悍ましく手にこびりついていた。
大義のため、大義のためだ。
より良くなるために、必要な犠牲であった。
理解していた。理解できていた。だから。
必ず成さねばならないと思っていた。
あの少女の虚ろな瞳が脳裏にこびりついていた。
この犠牲を無意味なものにしないために。
ワインを揺らしながら考えていた。
理解しているのに、どうして引っかかっているのか。
いつまでも感情が釈然としないのか。
倫理的に肯定できる行為では無い事は分かっている、
変革に犠牲がつきものである事も理解している。
それのために手を穢す事を厭うているのとは、どこか、違う。
もっと、もっと、単純な、
魔物に襲われて滅んだ村を見た。
──私達のしたことで滅んだ村を見た。
今の生活を見直そうと前を見た村だってあったというのに、
無くなったものが、亡くなったものが、引っかかっていた。
罪悪感なんだろうと納得していたつもりだったが、違う。
変えなければならない。
何としてもこの世界を変えなければいけなかった。
視界を塗りつぶした赤で
釣り合いが取れてしまった。
世界が変わる事を望んでいた。
人にとってよりよい世になる事を望んでいた。
そのために尽くす事を信仰とした。
全てが無意味になる
それが事実だった
使命感を帯びた意志は行き場を失った。
それだけの事だ。