RECORD

Eno.111 アルバート・ヴァイルシェールの記録

神は救いを与えない

隣にいたいと思っている。他者の幸福
幸せになろうとしている。他者の幸福
否定しないように足掻いている。よくないとされたこと

そのために己の幸福
自己犠牲
を諦めようとしている。
自身を排除した幸福の灯火を諦めようとしている。すべてあなたのよりよきよう
矛盾した。破綻していた。
存在理由を否定してまで叶えようとすることが間違っているはずだ。
幸福のために幸福を犠牲にしては意味がないはずだ。

自身を否定肯定できなくなっている。
意識の統一が出来なくなった頭のなかで意見が割れ続けている。
幸せにならなくては・・・・・・いけない。間違いは正されなければならないと信じている。
ちがうと叫んだ鴉に自我がないと呼べるのか。

殻を破らねばと幼子が鴉の羽根を毟っていた。
そうではないのだと暴れる大鴉の足を折って
地に足をつけたはずなのにその足から崩れていく。
自身の行いを肯定したら死んでしまう。
その羽根だって必要だったと嘆いて啼いて否定している。
なのに否定することを否定して蛮行を止められない。

全てが破綻していた。


炎に還りたい消えたくない、」



幸せになりたいはやく死にたい
自分がまだ自分でいられるうちに


足掻いている、

壊れないように 消えないように足掻いている

なんでもし矯正ます、まちがいをた矯正だします、ただしいができる矯正ようになります
いいこになりたい言いなりになりたい

自身を肯定する手段がない
戻ってきた自我の思考は当然己と同じで自分を切ることを愛していて、
他者の望む形に壊れたがっている
思想の削り滓の我が儘自由意思が増えたところで欲求が育つばかりで
抑えれば抑えるほど歪に膨む感覚がする
底を失くせば割こうとする上限を失って破滅する、
だめと抑圧することが悪化を招くことが身に染みていた。

心臓部に根差したものを弄って壊してしまったら
そこに残るのは幼子でも大鴉でもない
それでは意味がないのだと暴れている
道具には二度と戻れないのだと諭している

鴉をよかれと壊そうとすることに抵抗している 信仰にすがっている
ひとのやくにたちたいと思っている
善きことのための薪になりたいと思っている
数多の幸せのためになりたいと願っている
誰かと生きていきたいならそれだけではだめだと知っている
独善的な欲はひとりであったから 同族と地下に潜んでいたから許されていたこと
だからほんとうは叶えてはいけない欲であることを知っている

完全にわかれつつある自意識に
ふたつだった自分達が 二人になってしまうのがそう遠くはないのでないかと
進む自己破壊を食い止めて なにも変容しないまま幸福な夢を見ている

くらい部屋に連なった記憶で呼吸をしている

精神がまだ壊れていないのだから、これは我が身が乗り越えるべき試練なのだ、
獣とひとの間に辿り着いたときのように

ただ祈るだけなら自由であった。