RECORD
Eno.8 スフェーンの記録
finale:ending?
「…チケットはさ、」
みんなで使うものだった。
自分たちのもとに届いていた、イレギュラーの一つだ。
自分たちのところに郵便物なんてものが届くはずがないのに、これは封筒でいつのまにか届いていた。
バレないように、秘するように、全員でそれを開けた。
“貴方に"戦いの素質"を見出し、この地へと呼び出した”
「……」
「俺たちが戦っていると認めてくれた、誰かがいたらしい」
「それが嬉しかった」
「それが、さらに前へと進ませてくれた」
戦っていたらしい。
それは、誰かを苦しむな未来を作りたくなくて。
そんな理不尽に争いたくて。
彼らに居場所を作ってあげたくて。
──自分の居場所が、欲しかったのかもしれない。
ただ、生まれたことを否定しないで欲しかったのかも、しれない。
他人のためならいくらでも走れる。
それが正しいことであるのなら、きっと走っていける。
そうするべき、のために生きている。
そうするべき、力があるのだから。
自分の正しさと、人への想いのために生きていた。
それはエゴだったのかもしれない。
根っこが自分がそうであってほしくないからで始まっていて。
ひどく他責で歪んだ欲。
「このチケットは、もしも失敗したらみんなで逃げるために使おう」
「別世界への案内券は、立て直すために使おう」
そう話して、そうして、自分に託されて。
自分だけが立て直すこととなっている。
◆
「…………」
「……したくなかった」
「立て直しなんて、したくなかった」
けれどやらなければならなかった。
死んだ友人たちに示しがつかず、これから死ぬ子供達の未来が変わらないのがどこまでも苦しく。
なにより、やっぱり自分にはできる力があるのだから。
世界転倒。
上から下まで反転を。
「世界を変える」
やらなければいけなかった。
やりたい、のではない。
やらなければ、ならない。
ひどく爛れた自己嫌悪のなかで、どうしようもなく鈍った宝石を鷲掴んで指標とした。
その宝石は空想で、掴んだことは厳格でしかない。
もはや手元のチケットのように他は燃されて何も残っていなかったが、それを光としてあまりの券を握りしめている。
走るための足を無くしていたが、つぎはぎにして前へと進んだ。
いつだってハッタリが得意だ。
いつだってハッタリしかない。
何もできなかった無力感は、麻薬のようなエンジンと化す。
まだ次が、まだ先が、まだ未来が。
残り物の残滓に火がつけば、パンクするまでは走ることが可能だ。
まだ希望を見たい。
まだ希望を見せたい。
目のひび割れさえ埋まれば。
わからない星の声に耳さえ向ければ。
今度こそは失敗もしないことだと確信した。
1人だ。
「…」
──執着、だった。
どうしようもなく、執着だった。
自分を失って、自分の居場所を失って、他もそうであることを知った。
もう自分は良かった。周りがそうなるのが嫌だった。
同じくらい、多分、自分がここにいることを喚きたかったのだと思う。
理不尽だった。理不尽があることを知ってしまった。
だから助けなければならなくて、結局誰を助けたかったのだろう。
けれども幼少の頃から持ち続けた言葉と力には違いがなく。
それがあっけなく砕かれ、好きな人たちを巻き込んだ事実に、耐えられなかった。
自分に希望を見ていてくれた人を裏切った。
世界は何ひとつ自分たちに味方をしないことはわかっていたことだろう。
足が止まってしまっていて、あとは、やるべきことをやるだけの余暇。
「………」
どれも気持ちがバラバラで、纏まりがなくてひっつかない。
ただどうしようもなく気持ちが鬱屈の中に沈んでいき、それすら許したくなかった。
間違っているだろうそんなもの。
最初から最後まで言い出した口が責任を持つべきで。
止まるわけにはいかず、やり残しだけはしなければならなかった。
許さなかった。赦せなかった。
許しを求めなかった。
ただ、潔白と誠実な色には、せめて染まっていたかった。
初めから1人でやればよかったのだ。
初めから1人なのだから。
「これを使えるのも俺だけだから」
眼帯の上を指でなぞった。
くだらなくて、くだらなくて、くだらなくて、愚か。
自嘲したところで誰も口を開かない。
何もかもが嫌になった。
<small責任がないのなら、惨めに死にたかった。
どうしようとなく惨めに死にたかった。
ワンチャンスを賭けて見せながら。
楽になりたいのと、破滅を求めている。
戦いを放棄し、自爆行動へと移る。</small>
◆
そうしたところで未来はかわらない。
反転できず、ねじ切れたものを思うのだ。
誰が結局、本当に信じたいもので、自分が信じていたのだろうか。
何がしたかったのだろうか。
愚か者。
「……」
「クソが。クソが、クソが、ああ、なんだって、」
「もう嫌だ、たくさんだ、ああ!!たくさんだよ!!」
「せめて何か叶えてくれよ」
「俺じゃなくて、誰かが叶えてくれよ、なあ、だって、そんなに高望みをしたか、俺は」
「俺はただ、…俺は、俺は……」
「しあわせに、」
───目を強く輝かせて、膨張した頭では夢想しか考えられまい。
理性も孤独も吹き飛ばして。
ただ、天からの砲撃で、正当に打ち滅ぼされている。
──くだらなく浅い、閉鎖の街は色褪せていた。
今日もまた、輝くことはない。
そして、構築されたシステムは完璧なものとしか言えない。
星の声たちは今日も、窮屈に嘆きながら、渇望している。
自分たちの復権を。
力を分けた人間たちの戦いを。
それくらいしか暇つぶしがない。
そこに期待は、なかった。
◆
……
…………
…………………
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話の終わりが、捻じ曲がった音がした。
みんなで使うものだった。
自分たちのもとに届いていた、イレギュラーの一つだ。
自分たちのところに郵便物なんてものが届くはずがないのに、これは封筒でいつのまにか届いていた。
バレないように、秘するように、全員でそれを開けた。
“貴方に"戦いの素質"を見出し、この地へと呼び出した”
「……」
「俺たちが戦っていると認めてくれた、誰かがいたらしい」
「それが嬉しかった」
「それが、さらに前へと進ませてくれた」
戦っていたらしい。
それは、誰かを苦しむな未来を作りたくなくて。
そんな理不尽に争いたくて。
彼らに居場所を作ってあげたくて。
──自分の居場所が、欲しかったのかもしれない。
ただ、生まれたことを否定しないで欲しかったのかも、しれない。
他人のためならいくらでも走れる。
それが正しいことであるのなら、きっと走っていける。
そうするべき、のために生きている。
そうするべき、力があるのだから。
自分の正しさと、人への想いのために生きていた。
それはエゴだったのかもしれない。
根っこが自分がそうであってほしくないからで始まっていて。
ひどく他責で歪んだ欲。
「このチケットは、もしも失敗したらみんなで逃げるために使おう」
「別世界への案内券は、立て直すために使おう」
そう話して、そうして、自分に託されて。
自分だけが立て直すこととなっている。
◆
「…………」
「……したくなかった」
「立て直しなんて、したくなかった」
けれどやらなければならなかった。
死んだ友人たちに示しがつかず、これから死ぬ子供達の未来が変わらないのがどこまでも苦しく。
なにより、やっぱり自分にはできる力があるのだから。
世界転倒。
上から下まで反転を。
「世界を変える」
やらなければいけなかった。
やりたい、のではない。
やらなければ、ならない。
ひどく爛れた自己嫌悪のなかで、どうしようもなく鈍った宝石を鷲掴んで指標とした。
その宝石は空想で、掴んだことは厳格でしかない。
もはや手元のチケットのように他は燃されて何も残っていなかったが、それを光としてあまりの券を握りしめている。
走るための足を無くしていたが、つぎはぎにして前へと進んだ。
いつだってハッタリが得意だ。
いつだってハッタリしかない。
何もできなかった無力感は、麻薬のようなエンジンと化す。
まだ次が、まだ先が、まだ未来が。
残り物の残滓に火がつけば、パンクするまでは走ることが可能だ。
まだ希望を見たい。
まだ希望を見せたい。
目のひび割れさえ埋まれば。
わからない星の声に耳さえ向ければ。
今度こそは失敗もしないことだと確信した。
1人だ。
「…」
──執着、だった。
どうしようもなく、執着だった。
自分を失って、自分の居場所を失って、他もそうであることを知った。
もう自分は良かった。周りがそうなるのが嫌だった。
同じくらい、多分、自分がここにいることを喚きたかったのだと思う。
理不尽だった。理不尽があることを知ってしまった。
だから助けなければならなくて、結局誰を助けたかったのだろう。
けれども幼少の頃から持ち続けた言葉と力には違いがなく。
それがあっけなく砕かれ、好きな人たちを巻き込んだ事実に、耐えられなかった。
自分に希望を見ていてくれた人を裏切った。
世界は何ひとつ自分たちに味方をしないことはわかっていたことだろう。
足が止まってしまっていて、あとは、やるべきことをやるだけの余暇。
「………」
どれも気持ちがバラバラで、纏まりがなくてひっつかない。
ただどうしようもなく気持ちが鬱屈の中に沈んでいき、それすら許したくなかった。
間違っているだろうそんなもの。
最初から最後まで言い出した口が責任を持つべきで。
止まるわけにはいかず、やり残しだけはしなければならなかった。
許さなかった。赦せなかった。
許しを求めなかった。
ただ、潔白と誠実な色には、せめて染まっていたかった。
初めから1人でやればよかったのだ。
初めから1人なのだから。
「これを使えるのも俺だけだから」
眼帯の上を指でなぞった。
くだらなくて、くだらなくて、くだらなくて、愚か。
自嘲したところで誰も口を開かない。
何もかもが嫌になった。
<small責任がないのなら、惨めに死にたかった。
どうしようとなく惨めに死にたかった。
ワンチャンスを賭けて見せながら。
楽になりたいのと、破滅を求めている。
戦いを放棄し、自爆行動へと移る。</small>
◆
そうしたところで未来はかわらない。
反転できず、ねじ切れたものを思うのだ。
誰が結局、本当に信じたいもので、自分が信じていたのだろうか。
何がしたかったのだろうか。
愚か者。
「……」
「クソが。クソが、クソが、ああ、なんだって、」
「もう嫌だ、たくさんだ、ああ!!たくさんだよ!!」
「せめて何か叶えてくれよ」
「俺じゃなくて、誰かが叶えてくれよ、なあ、だって、そんなに高望みをしたか、俺は」
「俺はただ、…俺は、俺は……」
「しあわせに、」
───目を強く輝かせて、膨張した頭では夢想しか考えられまい。
理性も孤独も吹き飛ばして。
ただ、天からの砲撃で、正当に打ち滅ぼされている。
──くだらなく浅い、閉鎖の街は色褪せていた。
今日もまた、輝くことはない。
そして、構築されたシステムは完璧なものとしか言えない。
星の声たちは今日も、窮屈に嘆きながら、渇望している。
自分たちの復権を。
力を分けた人間たちの戦いを。
それくらいしか暇つぶしがない。
そこに期待は、なかった。
◆
……
…………
…………………
「………」
「………反転した」
話の終わりが、捻じ曲がった音がした。