RECORD

Eno.48 Siana Lanusの記録


それは別に、特別な日では無かった。

惑星リ・ヴァース中央大陸セント・ヴァース、
リヴォルトの森と呼ばれる深森の中にあるダンジョン内にて。
その男──ヴェセンス・パルカージは奇妙な違和感を抱いた。

「……シスター・キディア」


「あら、どうしました〜?プリースト・ヴェセンス」


「……もう一人・・・・居なかったか?」


「?……ああえっと〜、
 今回のお仕事は私一人で済ませちゃいましたよ〜。
 そもそも、私一人でってお話だったじゃないですか〜」



水色の髪の女──キディアの言うことに、違和感は無い。
確かにそう命じて、想定通りに戻ってきた、のだが。
何かが抜け落ちたような、ほんの僅かな違和感がある。

まるで誰かの記憶だけ抜き取られた、ような。


──“巻き戻り”と称されているが、
それは言わば「セーブ地点を参照した再構築」だ。

不足したものは無いものとして組み直されるのがこの世界の恒常性で、
……“連れ戻し”を逃れたシアーナ・ラナスは、“存在しないもの”とされた。



「…………、」



ヴェセンス・パルカージは、シアーナ・ラナスの師のような存在であった。
シアーナが一人で旅を始めようとした時にヴェセンスは出会い、旅の仕方や様々な思想を教え込んだ。

……8年もの期間が生んだ記憶の空白が、ヴェセンスに違和感を抱かせていた。
気に留めなければ忘れてしまう程度の違和感を繋ぎ止めながら、
ヴェセンスは他の同志達にも話を聞いたが、成果は無い。

ただ、ヴェセンスの幼馴染であり教祖でもあるクランベル・エルスィーが、言ったのだ。

「──フラウィウスって所に行けば
 何か分かるかも知れねぇ、とよ」



我らが大いなる水源──ル・ティアー曰く、と。