RECORD

Eno.56 ルラキの記録

遅れて届いた手紙

この手紙が届く頃には、もう私が眠っていることでしょう。

まずは。
あの時以来、貴方へ声をかけられなくてごめんなさい。
今は思考も澄んでいて、ミハエルがミハエルとして機能している。
私はなすべきことをすべく、ムゥをあちらこちらへと連れて行ったわ。

あの子は、初めに見た私を母とみなしている。
ろくに母らしいことを1つも出来ず、代わりに貴方と、エルメルと。
そして、他にも関わった人々らによって。
奇跡的に、今日まで生きることが出来ている。

乱暴ではなく、無邪気に。
獣よりも人らしく、振る舞って。
きっと、誰が見ても"いい子"なのだと思えるでしょう。


……
………

私は、貴方にお礼を言えない。
今言ってしまえば、それはきっと、本心ではない形式的なものになってしまう。
道具としての役割を、中途半端に手に掴んだままで。
自ら願った在り方で、この世界に囚われて。

私は、何を望んでいるのか。
これからどう在りたいのか。
何をすべきなのか。

分からない。
分からないの、ずっと考えてるのに。

けれど消えてしまえば、貴方達の決断をなかったことにしてしまう。
それも選びたくなくて、何も選びたくなくて。
だから、私は少しだけ、眠ることにした。

恐らく。
またこの世界が賑わえば、私は目を覚ますことでしょう。
だからどうか、その時まで答えを待って欲しい。
本心で、思った言葉を口に出せるその時まで。

………
……


願わくば、貴方が私を忘れて欲しい。
仮初でも女のなりをしているのだから、安易に抱き締めたりしては駄目よ。
大切なものだけを、抱き締めなさい。

だから、



忘れて



いなかったのだと



私は





そういう道具モノだから。