RECORD

Eno.991 ヴァン・ローゼンクランツの記録

郷愁-②

姉の武器であるナックルダスターを使い始めた、初戦の試合。

「……うまくいかないもんだな」



負けた。ものの見事に。

それでも何回か使えば扱い方は少しずつ覚えられてくる。
これも戦場で培った生存術ゆえか。
それとも、わずかな時間でもここで適応力が培われてきているのか。

「もう少し……慣れてきたら。
こっちを使ってみても、いいかもしれない……」



シーズンが来る前に、あらゆる武器を試しておきたいから。
傍らのレイピアに目を留める。

自分と姉を養子として引き取り、脱出の手引きをし…
『兵器』から『人間』へと。立場だけでも引き戻してくれた人。
ラルヴィア・ローゼンクランツ卿こと───『紅玉公』。
彼が愛用していたのが、レイピアだった。

自分の武器であるダガー。
姉の武器であるナックルダスター。
義父の武器であるレイピア。

「……俺を俺たらしめてくれた人達の武器」



別の世界から飛ばされてきた。
元の世界に戻る方法も分からない。
残された時間は、告げられた寿命の通りなら、

「───あと、7年」

せめて武器だけでも───共に、最期まで、なんて。