RECORD

Eno.263 ユビアサグラーダの記録

書き置き/3

【王国文字からの翻訳】

親愛なる近衛騎士団の兄弟たちへ


寝床を路地裏に移して数日経ちましたが、場所のきな臭さの割に案外人がいるものですね。夜中まで喧嘩と喧騒が聞こえてきて──それで寝られなくなるほどやわな俺ではありませんが──ここがあくまで祭の渦中なのを思い出します。

特筆することとしては、路地での暮らしは当初の想定よりも得るものが多い、ということに尽きます。
俺がここから帰った後にせねばならない決断について、異教の教徒より、助言を貰いました。信じた人が悪意と堕落に負けぬよう、側で見てやれ、とのことです。
俺がむざむざ残してきてしまったあの子を、今更支えることは、果たして許されることでしょうか。この恐れも、いつも通りの逃げ癖の発露なのでしょうか。皆なら、いつかのように発破をかけてくれるでしょうか。
(見る限り彼はろくな末路は迎えないでしょうが、それでもその先に救いがあれば良い、と思うばかりです。)

今日起こったこととしては、探し物をしていた女性に勇者を見つけたら路地に誘うよう、頼むことに成功しました。
あの路地には探し物をする者が多いことからの目論見でしたが、うまくいったと言っていいでしょう。彼女も見るからに訳ありでしたが、不誠実には見えませんでしたから。
こちらもやれるなりに、彼女の探し物に尽力したいところです。

最後に、昨日随分久々に騎士としての名乗りをしました。
諸事情あり、こちらのことを絶対に口外できない人物なので、情報が漏れることはないでしょう。決して、そうだから名乗ったわけではありませんが。
かつて、俺たちはお互いが死んでもお互いを生かせるように、名前を付け合いましたね。それさえ忘れなければ、人は真に死ぬことはないのだと。世の中には、名前はあっても死者と同然の人間がいることを、昨日初めて知りました。
だから、つい寂しくなって、彼を生かすために些細な契約をしました。これを覚えている限りは、俺の内で彼は生き続けるでしょう。皆と、同じように。

思ったよりも書けることが多く驚きました。この調子なら、作家も夢じゃないかもしれませんね。

では、また。



         53番 "蛇腹"のリンドロンド より


メモ:
・酒に気をつけるように。勧められても断ること。
・『祈り』について調べること。
・明日、トオルに満月を知らせに行くこと。