RECORD

Eno.563 ブルーバードの記録

あれから

りーくんの治療はそこそこ壮絶ながらも順調で、今は痛みも殆ど無いみたいです。
酒場にやって来るなりオイル&結晶カクテルをした時はびっくりしましたが、それもらしいかなって……


私達の体感で一年前、重い病に冒されたりーくんに反応した左手に浮かび上がったは、龍。
血のような赤と、孤独の黄色に輝く龍でした。
彼の人生を象徴し、彼を連れて行くもの。
彼が苦痛に顔を歪める度に輝きを増し、……今なら、DXグラディウスのようだった、という冗談が冗談として聞こえてくれるでしょうか。
龍が彼を連れて行く時は、すぐそこに迫っていました。




彼に出会う直前、夢を見ていました。
川の向こう側の支流、温泉からの温かい水が流れ込む場所に、長い尾鰭を持つ美しいグッピーの群れが泳いでいて
私はそのうちの一匹をプラケースに掬い、連れ帰る……そういう夢です。
グッピーは雄、1mはあろうかという大きな赤い尾鰭は、朱に染まったウェディングドレスのようでもありました。


―――三途の川を渡ってしまいそうな誰かが私を呼んでいる
―――次に左手が反応する人が、その人かもしれない



その人が現れたら、できるだけ優しく接しようと思っていたんです。
私が連れ帰らなかったら、グッピーは川の向こうにいってしまう。
けれど、連れ帰ったということは、どうにかできる道があるということ。
鍵は私。
そういうキャスティングなら、その役を務めるのが、私の星。
運命という盤上に、必要な時必要な場所に呼び出される駒、それが私の運命。

……『持って帰ってしまう』ということは、まあ、その方が私の結婚相手なのでしょうし、それは実際そうなったわけですが。



鯉は荒波を登り切ると龍になる、と言いますが
彼は荒々しい鯉ではなく、優雅に美しく泳ぎ、誰かに見られることで輝くグッピーです。
いつか必ず龍になるからこそ、まだ暫く、尾鰭の長いグッピーでいて欲しいと……私は思います。