RECORD
Eno.279 ネモフィラの記録
何時かの夢
玉座へ座り、目の前の人間を見下ろす。
鎧を着こみ……ああ、女神の祝福か。ご苦労なことじゃな。
その剣は見覚えが有るぞ。かつて勇者が使ってた奴。
「当代の勇者、といったところかの?ご苦労なことじゃ」
『■■■!俺はお前を……!』
勇敢じゃな、今回の勇者は。けれどなぜそんなに怒っておる?
「のぉ。悪魔は悪魔らしく生きておるだけじゃ。妾は何もしておらん」
『俺の村はお前ら悪魔に滅ぼされたんだ!だから……!』
「其の親玉である妾も殺す、と? ……のぉ。おんしはどこに住んでおったのじゃ?」
その問いかけに勇者はきょとんとした顔を一瞬浮かべる。ああ、愛い顔じゃ。
『……なにを言って……ミミ村、だが……』
「あそこか。……のぉ。妾があの村を襲えと言ったわけじゃないと言ったら。おんしは納得してくれるか?」
『納得だと……!?』
ああ、やはりな。この勇者は、純粋すぎる。
「……妾はな、確かに悪魔の中では最も長老じゃ。けれど完全なリーダーではない。
妾が命令すれば大抵の悪魔は従うじゃろう。影響力もある。が……」

『……は……?』
目の前の勇者の顔に動揺が浮かぶ。明らかに剣先がブレておる。ああ、それもそうじゃろ。
なんせ、勇者が対峙している悪魔は……
「妾はな、決闘は好きじゃ。けれどそれは強者と戦いたいからであって、殺したいからではない。
妾はな、確かに闘い自体は好きじゃ。けれど弱者迄滅ぼしたいわけではない。が……」
玉座から立ち上がり、一歩。また一歩。勇者に歩みを進める。
妾より体躯では遥かに上回るはずの勇者の顔に、怯えが見て取れる。安心せい。命を取ろうとしておらぬよ。
「……人間同士が殺し合うなら別じゃ。上位悪魔と人間では勝負にすら普通はならん。
でもゲームとして、人間で遊ぶことはある。けれど直接は殺さん。じゃあどうするか?それは……」

――――――――――――――――――――――――――――

ベッドの上で目覚めてから、ふと呟く。
まだ妾が■■■の名を強く名乗っており、人間が良く挑みに来た頃。
あの頃は悪魔もすべて統率が取れたわけでもない。末端が人間を襲い、悪魔を恐れた人間が妾を殺しに来る。そんな日々がずっと続いておった。
……もっとも、妾に傷を負わせた勇者は殆どおらんかったが。

鎧を着こみ……ああ、女神の祝福か。ご苦労なことじゃな。
その剣は見覚えが有るぞ。かつて勇者が使ってた奴。
「当代の勇者、といったところかの?ご苦労なことじゃ」
『■■■!俺はお前を……!』
勇敢じゃな、今回の勇者は。けれどなぜそんなに怒っておる?
「のぉ。悪魔は悪魔らしく生きておるだけじゃ。妾は何もしておらん」
『俺の村はお前ら悪魔に滅ぼされたんだ!だから……!』
「其の親玉である妾も殺す、と? ……のぉ。おんしはどこに住んでおったのじゃ?」
その問いかけに勇者はきょとんとした顔を一瞬浮かべる。ああ、愛い顔じゃ。
『……なにを言って……ミミ村、だが……』
「あそこか。……のぉ。妾があの村を襲えと言ったわけじゃないと言ったら。おんしは納得してくれるか?」
『納得だと……!?』
ああ、やはりな。この勇者は、純粋すぎる。
「……妾はな、確かに悪魔の中では最も長老じゃ。けれど完全なリーダーではない。
妾が命令すれば大抵の悪魔は従うじゃろう。影響力もある。が……」

「妾はな?仮に村を滅ぼすとしても、そういう物理的な壊滅は好かんのじゃ」
『……は……?』
目の前の勇者の顔に動揺が浮かぶ。明らかに剣先がブレておる。ああ、それもそうじゃろ。
なんせ、勇者が対峙している悪魔は……
「妾はな、決闘は好きじゃ。けれどそれは強者と戦いたいからであって、殺したいからではない。
妾はな、確かに闘い自体は好きじゃ。けれど弱者迄滅ぼしたいわけではない。が……」
玉座から立ち上がり、一歩。また一歩。勇者に歩みを進める。
妾より体躯では遥かに上回るはずの勇者の顔に、怯えが見て取れる。安心せい。命を取ろうとしておらぬよ。
「……人間同士が殺し合うなら別じゃ。上位悪魔と人間では勝負にすら普通はならん。
でもゲームとして、人間で遊ぶことはある。けれど直接は殺さん。じゃあどうするか?それは……」

「おんしの様な純粋無垢な人間や、欲まみれの人間を篭絡するのじゃよ」
――――――――――――――――――――――――――――

「……懐かしい夢を見たのぉ。何十万年前じゃ。あの光景」
ベッドの上で目覚めてから、ふと呟く。
まだ妾が■■■の名を強く名乗っており、人間が良く挑みに来た頃。
あの頃は悪魔もすべて統率が取れたわけでもない。末端が人間を襲い、悪魔を恐れた人間が妾を殺しに来る。そんな日々がずっと続いておった。
……もっとも、妾に傷を負わせた勇者は殆どおらんかったが。

「……そう考えると、此処は本当に素敵じゃなぁ。理想郷みたいな場所じゃ」