RECORD

Eno.69 フラム=ニグラートの記録

不意に訪れる自己嫌悪

 
脈絡もなく、意味もなく、理由もなく、苦しくなることがある。

元居た場所では何一つ、何一つ、育ての親にも同年代の人間にも、何もかも、
ありのままを愛されなかったことが、自分の思考に大きな影を落としてくる。

本来の私はここに居るものではなくて、
魔法も何もない、鬱屈として誰もが痛みを抱える社会に生きていた。
私は、そんな社会では邪魔者だったらしい。

子供ながらに否定され続ける時間は、ただ痛くて悶えるしかできなかった。
好きな絵を嘲笑われ、動物を可愛がれば気味悪がられ、趣味が悪いと指さされ続ける。
大人になっても変わらなかった、それどころか首を絞めるものが増えた。

──労働できるだけの能力が無く、音や光・匂いに敏感で、人の視線は怖く、人の交流は苦痛で、社会はそんな臆病な私を許さなかった。

だから逃げてきた。
自分が一番邪魔なら、一番邪魔な自分をそこから退かせばいい。

それでも、それでもだ。
自分の後ろについてくる、薄暗い考えだけは置いてくることができなかった。
自己の存在を疑い、自分の価値を認めたくなくなり、自己を愛せず、ただ塞ぎ込んでしまう。

いつ、何処で、どんなタイミングで憂鬱な気分になるかわからないから猶更苦しみは大きい。

私よりもっとひどい目に遭う者は多いから。
なんて理由で無視することもできるけれど、愚かだって笑われるから言わないだけで。



誰も悪くない、悪くないんだ。
だから余計に、自分で抱えてしまうのだけど。

私の悪い癖。

天に願うほどでもない、どうしようもない気持ち。