RECORD

Eno.271 クリスフィア・ロートブルートの記録

私たち家族に何があったか?

一度、こうして文章に残す形で、書いてみようと思う。

私たち家族に、何があったか。



金騎国と、累和国と、混交国と、海彩国の、ちょうど交わるあたり。

の、金騎国寄りで、街道からも外れた、森の近くの田舎町。

小さな町の教会に、私たち家族は暮らしていた。



私はクリスフィア。白金。双子の姉。勇敢で無鉄砲なほう。

弟はクレフィオルト。黄銅。私と反対に、臆病で、冷静で、慎重な性格。

とうさまはアスター。赤銅。珍しい(らしい)純人間で、立派な神官騎士。

かあさまはマイト。藤紫。累和国のえらい鬼の家系で、すごい発明家。

みんな、自慢の家族。





私とクレフが7歳のとき、ある日突然、とうさまがいなくなった。

どこを探してもいなくて、次の日になっても帰ってこなくて。

不安で、クレフとずっと手を繋いで居たのを覚えている。



この時、とうさまは、異世界に放逐されていた。

とうさまはずっと前から、『原初の青の神』に呪われていたって。

その呪いが、私たち家族を引き裂こうとしたって。



とうさまが帰ってこなくなって三日目の夜に、教会が魔獣に襲われた。

家より大きな魔獣が、壁を壊して襲ってきた。

かあさまが応戦して(戦いは得意じゃないのに)私とクレフは逃げ出した。



森の中を逃げたけど、魔獣は私たちを追ってきて。

クレフは、私を庇って死んでしまった。

私も大怪我を負って、魔獣の瘴気に侵されて、記憶をほとんど失ってしまった。

かあさまは、森の惨状を聞かされて、私とクレフは死んだものと思った。


こうして、私たち家族は離れ離れになってしまったんだ。




それからは、それぞれ、いろいろ。

私はなんとか一緒に逃げ延びた剣と一緒に、騎士になるために頑張った。

クレフは幽霊になって、『群青の女神様』と契約して、壊れそうな世界のために働いた。

かあさまはみんなが死んでいないと仮定して、それぞれを探しまわった。

とうさまは家に帰るために、ずっとずっと歩き続けた。




何年も、何年も経った。




私は、騎士として頑張った功績が認められて、『群青の女神様』と契約することになった。

異世界に散らばった魔獣を全部倒して、瘴気を集める仕事。

私はどうしてか、瘴気に侵されても魔獣にならなかったから、私にしかできない仕事。


もちろん、請け負った。

魔獣を滅ぼすのは、全ての騎士の願いだから。




そうして、魔獣を狩り尽くして、全ての瘴気を集めて。

最後に戦うことになったのが、とうさまだった。


とうさまも瘴気に侵されていた。

とうさまは気づいてなかった。

自分が瘴気に侵されてることにも、
目の前の汚染されきったいきものが私だってことにも。

騎士は獣を狩らなきゃいけない。



私ととうさまは殺しあった。

あの時のことは今でも鮮明に覚えている。

ずっと会いたかった人、ずっと憧れていた人と、剣を交える感動。

それなのに、殺し合わなきゃいけない、運命の残酷さ。



最後には、刺し違えた。

とうさまのハルバードが私の心臓を貫いて、

私のロングソードがとうさまの首を捌いた。

けれど、それで終わらなかった。



私が集めていた瘴気が、私の血液と一緒に散って。

とうさまが汚染されきってしまって。

とうさまが、魔獣になってしまった。



魔獣は、人を襲い喰らうけもの。瘴気によって感染する、理性のない怪物。

騎士は、魔獣から人々を守るもの。剣を、魔術を携えて、魔獣を狩る戦士。



ずっと憧れていた、高潔な騎士であるとうさまが、

けものになって、私を食べた。







ここから先は、聞かされた話。



実は、私ととうさまの戦いを、クレフがずっと見ていたって。

その最中で、『原初の青い神』に会ったんだって。

話して、ひどいことをされて、けれど、色んなことを知れたらしい。



私たちの家が魔獣に襲われたのも、

とうさまがいなくなったのも、

魔獣がこの世に生まれたのも、

世界が滅びそうなのも、

全部『原初の青い神』のせいなんだって。




とうさまは、ずっと旅をしていた。

最初に私たちと離れ離れになってからは、家に帰るために。

呪いのせいで、何度も死んでは蘇りながら、苦痛に満ちた酷い旅路を。

魔獣になってからは、どうにかして自分を殺すために。



……そう、とうさまは魔獣になっても理性があったって。

それも、『原初の青の神』の呪いのせい。

家族が散り散りになったことも、娘を食べたことも覚えて、人の心のまま苦しむようにって。

とうさまは、ずっと、ずっと呪いに苦しめられていた。

『原初の青の神』に、苦しめられていた。




ずっとずっと後に、クレフととうさまは再開して。

いろんな仲間の助けを借りて、たくさんのことを成し遂げた。



魔獣になったとうさまを倒す。

『原初の青い神』を倒す。

とうさまと私の魂を救い出す。

ぜんぶやってのけた。




救い出してくれたから、私はこうしてここにいられる。




そのあと、私は新しい身体を作ってもらった。

もともとあった傷とか欠損は、なるべく残してもらった。



とうさまは、呪いのせいで魂がぼろぼろで、今は療養中。

ずっと微睡んでいるみたい。



クレフは、私たちを探しているはずのかあさまを探してる。








もうすぐ、


もうすぐ、家族が揃う。


そうしたらまた皆で、家族写真を撮ろうね。


だって、約束したから。