RECORD

Eno.222 ████の記録

フライパン



山のように用意した紙に、書いて書いて書きまくる。
相手の傾向、その編成と、持ちうる武器だけでの対抗策。

前シーズン、銃刀法違反で日本に持って帰れないからと
部屋に置きっぱなしにしてあった武器は、売り払われたのか大部分が勝手に持っていかれていた。
その中でも立てかけるように残してあったブロードソード。

値が付かないようなどこにでもあるような量産品。まさしく俺にぴったりだ。
なんてったってタダ、初めての闘技者に向けて配られるような武器なんだから。
お前との歴も長いねえ、とつぶやいても答えはこなかった。
当たり前だ。鉄は返事なんかしない。

それでもグリップ部分に巻かれたそれが返事を寄越してきたように思う。
お前も戦いたいか。現環境だと少し使いづらいからな。
お前におあつらえ向きの舞台があるんだがそっちならどうだと話しかければ。
鈍色のそれが確かに一度きらめいた。

サイスを置いてブロードソードを握る。
万能、それがお前の強み。七色に変化できるお前になら、あの場所はきっと容易いだろうよ。

そうして最後の一人と対峙したあとに、俺は重要なことに気づいた。
走っている最中はなかなかにハードで必死だったので気づかなかったが。
奴がいない。ウェポンマスターがひとり。
ぽつんとひとり分だけ空きがあって、丁度アレーナの遠くから酒場の盛況が聞こえた。
きっと今もあそこで店内を切り盛りしているのだろう。

まさか───いいやまさか。ありえない。
ありえない、という事こそがありえない。

「飲み代が失せた」というただそれだけの理由で、歴戦の覇者を俺含めて
いとも簡単につまみ出していたあのババアがいないのだ、と気づいたのは。
マヌケにも戦い終わったあとのことだった。

この戦いは終わっていない。まだ何かがある。

それが何かは分からないが。
まだ見ぬ強敵と相対する、そんな予感に身震いすらしたくなった。
ああいやだいやだ、勘弁してくれ。
あのババア、絶対ポンマスのライセンス発行の時は手ェ抜いてやがった。
本気モードのババアは誰得なんだよ。イヤ、意外と結構得なんだろうか。
少なくとも酒場連中のバトルジャンキー達は喜ぶと思う。

フライパンを見るたびに嫌な考えが頭をよぎって、なかなか寝付けない。
……眠れないのは新ナントカで新しくなったらしいDXグラディウスのせいもあるけど。
まぶしい。お前も隣のブロードソードを見習って、大人しく夜くらいは輝くのをやめないか。
とはいえ贈り物は贈り物で嬉しいので、一晩だけ飾っておくことにする。


当然のように寝不足で、翌日の戦績は落ち込んだ。