RECORD

Eno.563 ブルーバードの記録

ひとり寝の夜に

宿帳にりーくんの名前があることを確認して、私は帰宅しました。

りーくんの闘病によさそうな、病院近くの物件。
私は最低限生活ができればあまり頓着しないのですが、結構快適です。

今夜はフライパンに怯える隣人もいなければ
朝カンカンして起こす隣人もいないのは……とても、久しぶりな気がします。
強い治療をした時以来か、あるいは前回のモノマキアの時以来か……
ともかく、なんだか調子が狂っちゃいますね。




宣ちゃん先輩のことは、私は不貞とかそういった目では見ていなくて……
力になれることがあるなら、なんでもなりたいと思っています。
でも、この価値観は……おおよそ一般的ではなく……
『姫様』として望ましいものでありつつ、私なりにたどり着いた場所……Nirvana涅槃、でしょうか。
そこからの意見ですから、おそらく他の方からの理解は得られないものと考えています。
暗殺された姫君が暗殺者とくっついている、ということも、一般的には理解不能でしょうし。


涅槃とは、私達を苦しめる欲望の火が消えた状態を指すのだそうです。
依存、執着、嫉妬、そういったものが消え去り、穏やかな心で過ごせるようになること。
私がりーくんに依存や執着をしないのは、苦しむだけ苦しんで孤独に人生を終えようとしていた彼が
幸せにやってくれるのならそれでいいと思っているからで……
(何をしても彼はいつか戻ってくる気がしますし)
この価値観は、前世の父上に教えていただいたもののような気が、します。

彼は、莫大な富と権力を持っていたにも関わらず、帝位を欲しはしませんでした。
それよりも平和を愛し、子供を可愛がってくれました。
最期は権力を欲する黒い力の前に倒れたのでしょうが、私は腹黒く生き残ることよりも
先の時代に『真なる思いやりは悪しき力を超える』ことを示した父上を、強く支持します。
1000年後の世界が人権を大切にする世界であったことが、我々が正しかったことの証明でしょう。


これからまさに、その苦しみの炎を宿そうとしている宣ちゃん先輩に対し、私は……応援をしています。
……うーん、ちょっと理解はされないのでしょうけど、本心なんです、これ。
ついでに言うと、家の鍵は回収しませんでした。
鬼嫁でもないつもりです。