RECORD

Eno.276 リベレの記録

薄翅:Ⅱ

オフシーズンの間に、アルバイトをはじめた。
アレーナの商業区にある、小さなテーラーブティック【銀の糸】。
闘技衣装も扱っているお店で、その宣伝のためにスカウトされたのだ。

僕好みの衣装を扱っていて、モノトーンを基調にしたインテリア。店の雰囲気も落ち着いている。
はじめてのバイト先にしては、上々の環境ではなかろうか。

「リベレ〜。
 そこの資材の補充と掃除しといて」


「は、はい!」


……これで、店長(すごくこき使ってくる)の顔に、ものすごく見覚えがなければな〜。
何度間違えて父さんって呼んで減給させられたことか。

僕の故郷は、VRワールドでの生活が当たり前になっていて。
誰も彼もが、好きなアバターを纏って社会生活を送っている。
たまたま、父が銀髪獣耳幼女の姿を使っていたというだけで。店長とは顔が似ているだけで何の関係もないのだろう。
……納得はいかないけれど。

「何ぼさっとしてんだよ。
 このあたしがテメェの闘技衣装を手がけてやるんだ。
 シーズン始まったら闘技もバイトももっと忙しくなるんだからな」


「この店お客さんが来てるところ全然見ないんですけど」


「ピチチ」



閑古鳥だって鳴いている。
母のアバターにそっくりだ。オスらしい。もうめちゃくちゃだ。



「これから流行るとこなんだよ」とのらりくらりとしているし、
時々僕に店番させて賭博に行っている様子なんだけど……(給料がそこから出てないか、不安だ)。
でも、店長の腕には信頼を置いている。
今シーズンも武器ごとに衣装を用意できたのも、店長のおかげだ。
僕は文句を言える立場ではない。

「リベレ。決闘で白星の方が多かったら、要望のひとつくらいは聞いてやる。
 せいぜい頑張りな」



正直僕の頑張りひとつで繁盛する店にはならないとは思うので、
冗談も入っているのだろうけど。

期待をかけられるのは、そう悪い気はしない。
進む方向と同じなら、なおのことだ。