RECORD

Eno.356 イータ=スティールハーツの記録

無題

両の手に握った手斧を振るい、動きを洗練させていく。
武器の使用許可が出た程度では足りない。
意識せずとも動けるように手に馴染ませなければ。

兵士になってすぐの頃、教官から言われた事は今でも守っているつもりだ。

「お前は物覚えが悪いな! 良いか?
 お前みたいな奴は頭で考えようとするなよ、時間の無駄だ!
 どんな武器でも扱えるようになれ。動きを身体に叩き込め。無意識に動けるようになるまでだ」

罵倒と共に与えられた教えは、私を今日まで生かしている。

戦争なんてものをするほどの余裕はあの国にはない。
不作が続いて農村が丸ごと野盗に堕ちることだって珍しくもない。

私達兵士の振るう刃は、その殆どが自国の人間へ向けられる。
食うに困り兵士となった私の刃は、食うに困り賊となった人間へ向けられる。

頭では同情や憐憫の言葉が流れていくけれど、身体は無意識に相手を取り押さえ関節を外していた。
握りしめることが困難になった彼の手から赤黒く錆かけたナイフが取り落とされた。
嗚呼、もしかすれば私の命もあの錆のひとつとなっていたのかもしれない。