RECORD
Eno.34 シャルティオの記録
【0-11 暗躍の風王子】
──視点:フェンドリーゼ
◇
帝国から出て今度は南方へ。
目指すはセラン王国、
まだ帝国の侵略を受けていない南方の大国。
ここの警備は流石に厳しいことを理解しているので、
セラン側の国境にある関所で、
フェンドリーゼは変装のフードと眼帯を外した。
黒っぽく染めた髪は変わらないが、
こんな色合いのオッドアイなんて、
そうそうあるものではない。

これは母王に下された密命。
カサンドラへの接触は寄り道だが、
勿論、密命もちゃんと完遂するつもりだ。
アンディルーヴの名を聞いて、
国境警備隊の人たちは大混乱。
セラン王に事前連絡はあったか?
セラン王に伝えなければならないのでは?
様々な声が飛び交う中、
フェンドリーゼはにへら、と笑った。
「あー……と、安心してくれ。
俺はセランの第三王子、
ファブリツィオ・セラリスティアと親交があるんだ。
ファブル王子には訪問の件、伝えてあるから。
後は俺が城に出向けば良いだけだよ」
己が確かに魔導王国第二王子フェンドリーゼであることを示す為に、
王家の紋章の書かれた短剣を示しつつ。
そして彼は、国境を通ることを許された。
◇
季節は真冬。セラン王国は温暖な地方なので、
魔導王国の冬に比べればマシだ。
フェンドリーゼは途中で馬を借り、
王宮へ向けて走っていく。
セラン王に会って、伝えねばならないことがあった。
これからさらに荒れていくであろう北大陸。
まだ帝国の侵略を受けていないのは、
アンディルーヴ魔導王国とセラン王国の二国だけ。
王宮に辿り着き、密命を秘めて臨んだ会談は──
「ファルコシアス王陛下、
“覇王”ニコラス・アルドフェックのことは
ご存知ですよね?」
簡単な挨拶を終えて、フェンドリーゼが切り出した。
「今回、私がはるばる魔導王国から参ったのは、
かの覇王のもたらす戦乱に関して、
陛下に相談があるゆえに御座います」
セラン王と魔導王国第二王子は、
テーブルひとつ挟んでそれぞれ椅子に座り、対談の姿勢。
周りにはセラン王の弟妹たちが控えている。
その中には、フェンドリーゼと親しい第三王子、
ファブリツィオの姿もあった。
「フェンドリーゼ殿下。
北大陸を揺るがす災厄である覇王のことは、
無論、存じ上げている。して……相談とは」

色違いの、宝石のような瞳が王の真紅を見ている。
ふむ、と王は思案顔。
「……セランもアンディルーヴも、どちらもまだ、
かの帝国からの侵略を受けていない。故にこその申し出か?」
「は、それ故に。
帝国の動きを見る限り、
春になればどちらかの国への侵略が来ることが予想されます。
そうなる前に事前に手を打ち、
少しでも侵略の気を感じたのならば互いに援助を、と」
まだ無事なのはこの二国だけ。
助け合って、かの帝国に立ち向かいたいのだと
フェンドリーゼは語る。
「……セラン王陛下、どうか、ご助力を」
「…………同盟、受けよう」
セラン王が頷いた。
「こちらから、同盟の申し出をしようとしていたところだ。
遠路はるばるご苦労、フェンドリーゼ・アンディルーヴ。
此度の同盟の件、正式に書類に残す。しばし待たれよ」
セラン王が人を呼ぶ。
渡された羊皮紙に羽根ペンで文字を記し、
玉璽を捺し、フェンドリーゼに見せた。
二国の同盟のことが記され、
セラン王の直筆の署名が書かれている。空欄がひとつ。
書くべきことを理解したフェンドリーゼは、
そこに己の名を書いた。
「……これにて同盟は成り立った。
帝国からの侵略があった際、
セラン王国はアンディルーヴ魔導王国に協力することを約束しよう。
逆も然りだ、フェンドリーゼ・アンディルーヴ」
「……感謝致します、ファルコシアス王陛下」
これにて、フェンドリーゼの密命は完遂された。
【0-11 暗躍の風王子】
【0-11 暗躍の風王子】
──視点:フェンドリーゼ
◇
帝国から出て今度は南方へ。
目指すはセラン王国、
まだ帝国の侵略を受けていない南方の大国。
ここの警備は流石に厳しいことを理解しているので、
セラン側の国境にある関所で、
フェンドリーゼは変装のフードと眼帯を外した。
黒っぽく染めた髪は変わらないが、
こんな色合いのオッドアイなんて、
そうそうあるものではない。

「──アンディルーヴ魔導王国より
フェンドリーゼ・アンディルーヴが、
セラン王にお目通り願いたく参った!」
これは母王に下された密命。
カサンドラへの接触は寄り道だが、
勿論、密命もちゃんと完遂するつもりだ。
アンディルーヴの名を聞いて、
国境警備隊の人たちは大混乱。
セラン王に事前連絡はあったか?
セラン王に伝えなければならないのでは?
様々な声が飛び交う中、
フェンドリーゼはにへら、と笑った。
「あー……と、安心してくれ。
俺はセランの第三王子、
ファブリツィオ・セラリスティアと親交があるんだ。
ファブル王子には訪問の件、伝えてあるから。
後は俺が城に出向けば良いだけだよ」
己が確かに魔導王国第二王子フェンドリーゼであることを示す為に、
王家の紋章の書かれた短剣を示しつつ。
そして彼は、国境を通ることを許された。
◇
季節は真冬。セラン王国は温暖な地方なので、
魔導王国の冬に比べればマシだ。
フェンドリーゼは途中で馬を借り、
王宮へ向けて走っていく。
セラン王に会って、伝えねばならないことがあった。
これからさらに荒れていくであろう北大陸。
まだ帝国の侵略を受けていないのは、
アンディルーヴ魔導王国とセラン王国の二国だけ。
王宮に辿り着き、密命を秘めて臨んだ会談は──
「ファルコシアス王陛下、
“覇王”ニコラス・アルドフェックのことは
ご存知ですよね?」
簡単な挨拶を終えて、フェンドリーゼが切り出した。
「今回、私がはるばる魔導王国から参ったのは、
かの覇王のもたらす戦乱に関して、
陛下に相談があるゆえに御座います」
セラン王と魔導王国第二王子は、
テーブルひとつ挟んでそれぞれ椅子に座り、対談の姿勢。
周りにはセラン王の弟妹たちが控えている。
その中には、フェンドリーゼと親しい第三王子、
ファブリツィオの姿もあった。
「フェンドリーゼ殿下。
北大陸を揺るがす災厄である覇王のことは、
無論、存じ上げている。して……相談とは」

「──単刀直入に申し上げます。
我らがアンディルーヴ魔導王国と
セラン王国で、同盟を」
色違いの、宝石のような瞳が王の真紅を見ている。
ふむ、と王は思案顔。
「……セランもアンディルーヴも、どちらもまだ、
かの帝国からの侵略を受けていない。故にこその申し出か?」
「は、それ故に。
帝国の動きを見る限り、
春になればどちらかの国への侵略が来ることが予想されます。
そうなる前に事前に手を打ち、
少しでも侵略の気を感じたのならば互いに援助を、と」
まだ無事なのはこの二国だけ。
助け合って、かの帝国に立ち向かいたいのだと
フェンドリーゼは語る。
「……セラン王陛下、どうか、ご助力を」
「…………同盟、受けよう」
セラン王が頷いた。
「こちらから、同盟の申し出をしようとしていたところだ。
遠路はるばるご苦労、フェンドリーゼ・アンディルーヴ。
此度の同盟の件、正式に書類に残す。しばし待たれよ」
セラン王が人を呼ぶ。
渡された羊皮紙に羽根ペンで文字を記し、
玉璽を捺し、フェンドリーゼに見せた。
二国の同盟のことが記され、
セラン王の直筆の署名が書かれている。空欄がひとつ。
書くべきことを理解したフェンドリーゼは、
そこに己の名を書いた。
「……これにて同盟は成り立った。
帝国からの侵略があった際、
セラン王国はアンディルーヴ魔導王国に協力することを約束しよう。
逆も然りだ、フェンドリーゼ・アンディルーヴ」
「……感謝致します、ファルコシアス王陛下」
これにて、フェンドリーゼの密命は完遂された。