RECORD
Eno.268 ユドハの記録
幕間-2
赤い目玉のさそりの話を聞いたことがある。
井戸に落ちたのならば、殻ん胴の頭を動かして、脱出を考えればいい。
どうして悔やむ必要がある。
そんなことを考えた。
◆
「もっと戦いを楽しんだらいいのに」という話も聞いた。
何度も聞いた。……状況は違うが。
腕を大剣でへし折る、尾を斧で叩き潰す。
あるいは、短剣の先が首筋を貫く。指ごと食いちぎる。
そんな練習試合を彼とする時、彼はいつも最後にそう言った。
たとえ『巻き戻し』があったとしても、
取るか取られるかの戦いを楽しむなんてできるワケがない。
いつもそんなことを考えている。
◆
けれど、爪があのちぐはぐな二振りに届かなかった時。
何も気にしない戦いは案外気楽なものだし、
それでいて、負けるのは……後悔を抱くものだ。
そんなことを、初めて考えた。

井戸に落ちたのならば、殻ん胴の頭を動かして、脱出を考えればいい。
どうして悔やむ必要がある。
そんなことを考えた。
◆
「もっと戦いを楽しんだらいいのに」という話も聞いた。
何度も聞いた。……状況は違うが。
腕を大剣でへし折る、尾を斧で叩き潰す。
あるいは、短剣の先が首筋を貫く。指ごと食いちぎる。
そんな練習試合を彼とする時、彼はいつも最後にそう言った。
たとえ『巻き戻し』があったとしても、
取るか取られるかの戦いを楽しむなんてできるワケがない。
いつもそんなことを考えている。
◆
けれど、爪があのちぐはぐな二振りに届かなかった時。
何も気にしない戦いは案外気楽なものだし、
それでいて、負けるのは……後悔を抱くものだ。
そんなことを、初めて考えた。
「私の中に、まだ燻るものが残ってるものなんだな」