RECORD

Eno.268 ユドハの記録

幕間-2

赤い目玉のさそりの話を聞いたことがある。

井戸に落ちたのならば、殻ん胴がらんどうの頭を動かして、脱出を考えればいい。

どうして悔やむ必要がある。

そんなことを考えた。



「もっと戦いを楽しんだらいいのに」という話も聞いた。

何度も聞いた。……状況は違うが。

腕を大剣でへし折る、尾を斧で叩き潰す。
あるいは、短剣の先が首筋を貫く。指ごと食いちぎる。

そんな練習試合を彼とする時、彼はいつも最後にそう言った。

たとえ『巻き戻し』があったとしても、
取るか取られるかの戦いを楽しむなんてできるワケがない。

いつもそんなことを考えている。



けれど、爪があのちぐはぐな二振りに届かなかった時。

何も気にしない戦いは案外気楽なものだし、
それでいて、負けるのは……後悔を抱くものだ。

そんなことを、初めて考えた。




「私の中に、まだ燻るものが残ってるものなんだな」