RECORD

Eno.3 マイリーの記録

知った事で求めた事

結論から言うと御嬢は不安だったから急に走り出したんだ。
売店に並ぶモノの中に外の世界を意識させるモノがあったから。
ここに集まった人達は皆、ずっとこの地に居るものだと思い込んでいたから。

そんな中、自身の世界や別の世界へ行く事が出来るものが見つかれば不安にもなるだろう。
御嬢にとって、この地は自分を認めてくれる居場所となっていたから。

御嬢がここで遊び試合を続けているのは楽しいという事以上に
対戦相手が、観客が、確かに御嬢はこの場所に居ると肯定するから。
痛みに特別強い訳でも無ければ、慣れたという訳でもない。
だが、その痛みすら御嬢は楽しむ。
そこに自分が居ると認めた者にしか、それは与える事が出来ないモノだから。

御嬢はいつだって自分を見てくれる人を求めている。
そこに、大好きだから自分を見て欲しい人という特別なモノが増えただけだ。

だから、居なくなってしまっていないか、確かめずにはいられなかったんだ。
御嬢がやっと見つけた大好きな人がその移動手段を手にし、
元の世界や別の世界に行ってしまってないかを確かめずにはいられなかった。

御嬢が泣く所なんて初めて見た。

嘘つきだと言われた時も、両親とようやく遊んで「楽しくなかった」と言われた時も泣かなかった。
試合中に、治るとはいえ大きな傷を負った時でさえも笑顔を崩そうとしなかった。

そんな御嬢も、それだけは耐えられなかった。
やっと見つけた大好きな人が居なくなる事は耐えられなかった。

御嬢はただ、大好きな人とずっと一緒に居る事を求めた。

扉が開いた時点で御嬢が走り出した理由の大部分は解消されていた。
その後の拙い説明と、御嬢の想いを聞いた今はそう思う。