RECORD

Eno.28 柿原玄輝の記録

笑顔

記憶に印象深く残っているのは、いつも誰かの笑顔だった。
目が笑っていない、笑顔。
何故そんな顔をするのだろう。
今際の際。己の死について語っているその時。
何故、みんなは笑えるのだろう。
自分には、その気持ちが理解できない。

「私は、自分にできることを尽くした」

「その結果がこれだけども。……後は頼んだよ」

「あぁ……なんでこうなったのかなぁ……」

「貴方を好きになれば良かった」

「玄輝」

「俺が俺でなくなった時。処分は君に任せるからね」

死とは、最も痛いものだ。
心にも、身体にも、消えない痛みを残す。
その傷が癒えることは生涯なく、負債は積み重なるのみ。
今だからこそよく分かる。それは、決して救いなんかじゃない。

だからこそ、最期に笑っていられる感情を理解できない。

「そう、なんだね。私も……」

「……わ、わたし、も────」

そうだ。
自分はここから始まった。
何度経験しても慣れない痛み。

あぁ、笑えない。