RECORD

Eno.134 タニムラ ミカゼの記録

 身体拡張手術で背中から金属の腕を出せる分、寝れなくて。

「隈が酷すぎる」
「顔が悪すぎる」
「せめて髪でも染めて顔色明るくしろ」

 と、日々罵倒してくるのが聴劣化だ。

 そんな聴劣化は、毎年俺の誕生日に帽子を贈ってくる。4度目となった今年は、パイロットキャップに似た、横に耳のある変わった形の帽子。

「これなら横からでもその暗い顔を隠せるぞ!」

 余計なお世話だ。

「あと何回贈れるか分かんないんだ」
「長生きして10年しか生きられない魔導クローンの為だと思って受け取ってくれよ〜!」
「君が路上暮らししていた僕に手を差し伸べてくれなければ、今頃僕は此処に居なかったし」
「毎日が楽しいと思ってるんだ。その御礼なんだよ」
「僕はこの時の為にコツコツお金貯めてるんだぞ!」

 魔導クローンは企業の備品。給与はなく、少額のお小遣いが与えられるだけ。代わりに必要なものは会社の経費で落ちる。

 金の重要さは、自分が一番分かっている。
 嬉しい反面、躊躇いなく私情に財産を注ぎ込めるのはどこか羨ましくもあった。

 数少ない友人からの、大事な帽子だ。

 なあ。
 お前の事だから、誰かにこの帽子をあげても怒らなかっただろう? 「仕方ないなぁ」で済ませてくれるだろ?

 だから教えてくれよ。
 誰かに躊躇いなく金を使うことって、気分がいいのか?
 お前みたいに余計なお世話になったりしないか?

 この世界の通貨を見る。幾らか溜まっているが、思ったより多くない金額。
 俺はこれの為に此処に来た。金が目的だったんだ。

「いいじゃん。使っちまえよ」


「過去は金で買えないけれども、今したい事は金で買えるんだぞ」