RECORD

Eno.516 マリウスの記録

微睡みの抱擁7

そうして次に目覚めた時は、既に自身はこの身体になっていて。
小さなゆりかごの中でふわふわの布に包まれた身をよじる。

「ぴゅ、ぴゅぴゅ……」

人の扱う言語は話せず、鳴き声だけが小さく響いた。
ちいさなちいさな足は物を握ることすらままならず、ぱたぱたともがいていると、頭にもう一つ、何かが動かせる感覚がある。
その何かで布を掴んで身体からひきはがしていき、自由に動けるようになってゆりかごの中を跳ねて飛び出すと。

何もかもが大きな世界。
子供向けの可愛らしいポニーを模した椅子は本物の馬より大きく。
天井から吊り下げられたきらきらと光るメリーは大きな大きな星が煌めき。
机の上に置かれた哺乳瓶も、こんぺいとうも、全て。

恐る恐る部屋の中を探索していると、大きな鏡があった。
そこには、ちいさなちいさなまんまるとなった自身が映し出されており。


そして、その背後には。





「目覚めたか」


こちらをじっと見る姿は、確かに私で。


「私には必要ないと思っていたが、悪くない」


口調も声も、限りなく私で。


「私は、マリウスだ」


その口で私の名を名乗って。


「さあ、一緒に帰ろう。ヒュプイーズ。」


私ならざる行動をする。





そう言って、愛おしそうに両手で拾い上げられ肩の上に乗せられて。

撫でられて。

怖い 怖い こわい

そう思っている

思っている、はずなのに

自身のものではない思考が混ざる

肩に乗っていて安心

撫でられて嬉しい

一緒に帰りたい



わたしは マリウス私自身が 大好き



恐怖を押しのけて頭を埋め尽くす圧倒的な安心感と充足感

私ではない私に満たされる感覚



嬉しい怖い

ずっと一緒にいたい一緒にいたくない

大好き気持ち悪い



そっと長めの指で頬を撫でられて。









顔は自然と笑顔がこぼれた。