RECORD

Eno.3 マイリーの記録

悪くない休日


御嬢がレディと共に洋服を買いに行った。
オレは御嬢に普通の女の子として楽しんで貰いたかったので、
ショッピングの同行は断り、珍しく一人で行動をする事にした。

悪霊を連れずにただの女の子として笑う御嬢の姿を想像すると、
どうしようもなくニヤついてしまいそうになる。
……ジッとしてるとニヤニヤしてるだけの変な奴になるな。

元々色んな所を見て回る方が性に合っているんだ。
折角の機会だし、何処かに向かうとしよう。そう決めて選んだ先は応援席だった。

オレは少しでも多く試合に関する事を学んでおかなければならない。
別に生前、戦う事を生業にしていたわけでも無ければ
悪霊になって突然戦闘センスが開花した訳でもない。
回数を繰り返し、対策を練り、御嬢のサポートが出来るように知恵という武器を持つ。

御嬢を守る為に他者への攻撃を良しとする。
傲慢な悪霊らしい所業。地獄がお似合いだ。

応援席で試合を観戦する。
あの位置だと反撃が届くんだなぁとか、その姿勢からでも攻撃が出来るんだなぁとか。
そういった感想。別に戦うのが好きではないからな……
だが、本当はもっと別のモノを好きになれたハズの御嬢にそうではない道を示したのはオレだ。
少しでも試合を有利に出来るようにしっかりと目に焼き付けた。

他の闘技者と話をする。
御嬢の友達。試合で当たりたくない相手。
御嬢は友達と会える事を喜ぶが、対照的にオレの方は嫌な気分になる。
ましてや、御嬢と同じ年の女の子だぞ? 嫌な気分を通り越して最悪な気分になる。

トランプやチェスじゃ駄目なのか?
そう思いはするが、そういった遊びをオレが教えると御嬢はオレとしか遊ばなくなる。
だから黙って御嬢の知る遊びだけをこなして、御嬢の笑顔を守っている。

他の闘技者と話をする。
何度か会話をした若い男。御嬢はきっと名前を覚える機会まで辿り着けなかったから
何度か遊んだ事のある人。たぶんそういう風に見えている事だろう。

彼が試合を楽しみながら観戦している様子を見て、ふと愚痴の様に言葉が漏れる。
「なんでみんな戦ってんだろうな」
若い男はその言葉に反応し、持論を話した。
それに返すように話して、またそれに答える。数回そんなやり取りを繰り返す。

悪くない答えを聞く事が出来た。悪くない休日となった。
悪くないモノを知ったからこそ、時々御嬢とは別行動をする事にした。

試合には絶対に顔を出すさ。オレが巻き込んだ道だからな。
だけど、それ以外はどうかオレが居ない道を選んでくれ。
御嬢が痛みに耐えている姿を見続けるのは地獄に行くより嫌なんだ。