RECORD

Eno.239 睦月の記録

睦月の旅.5

内緒の散歩、そして自分を助けてくれた人間。
狐は毎日そのことを考えていた。
無論周りに言えるはずもなく、「再び彼に逢いたい」という思いは心の中で広がる限り。
そこで彼女はあることを思い付いた。
再び逢いたいのなら、彼を探しに行けば良いと。
そういう訳で彼女はお付きの狐に、人間に化ける妖術を教えて欲しいと頼んだ。お付きの狐たちは一瞬疑問に思ったが、快く教えてくれた。
そして天気雨の降るある日、都へと足を踏み入れた。

自分の命を救った彼は宮中にいるらしい、ということを知るのは容易だった。
絶世の美少女へと姿を変えた狐は瞬く間に出世し、宮中へとスカウトされた。やっと愛しの彼に会える…そう思ったのも束の間、
彼は帝であり、複数の婚約者がいたのであった。
いくら美貌があっても、新参者である彼女は帝の懐に簡単には入れないのは明らかだ。
─それなら、奪ってしまえば良い。