RECORD

Eno.401 グラスの記録

思い立つ


『―――まあ……冒険者に?
どうしてでしょう。ここでの生活は、嫌だった?』

「ううん。そういうんじゃないんだけど。
でも、外の世界を見に行ってみたいなーって」

『そう……。そうね、あなたももう、15だもの。
大人になったら、子どもは巣立つものですね』

「……じゃあ、許してくれる?」

『ええ、ええ。いいでしょう。
あなたの新しい旅立ちを、祝福します』

「ほんと!?やった~!!!」

『……でも、そうですねぇ。
あなたがもし死ぬようなことがあったら。
その時は、自分の身も満足に守れなかった…ということで、
冒険者は今後いっさい諦めてもらいます。いいですね?』

「え~~~……はーい……」

『ふふ。あなたを失いたくないんですよ。
"刻印"で、一度だけは死から護ることができるけれど。
それが発動した瞬間、強制転移で帰ってきてもらいますからね。

それから…最後にもうひとつ。これはお願いです』

『あなたがもし、価値のある子どもを見つけたら。
その時は、一度連れて帰ってきてくださいね』

「……んえ」

『ああ、人数は問いません。家族は多い方がいいでしょう?
私もつい、気に入った子どもを見つけると
家の広さを考えずに連れて帰ってきてしまうもの。うふふ。
それに、定期的にお顔を見せに帰ってきてくれないと、私も寂しいです』

『……あなたを外に送り出すこと。
あなたにその価値があることを、証明してくださいね。約束ですよ』

「……わかったよ。先生の"お願い"なら、断れないや」

『……ふふ。いい子ですね』

『あなたのことを、いつでも見守っています。
いつでも、どこにいても、繋がっていますよ。

いってらっしゃい、グラス。
愛しい我が子』




…………
……

わかってるよ、先生。

約束を破るつもりはない。
けれど、今じゃなくていいよね。
だって別に期限なんて設けられてないんだし。
ほんと、そういうとこ抜けてるんだから。

どんなに家族みたいに過ごしても。
どんなに確かな愛情があっても。
あたしは、あの日先生に買われた時から、ずっと先生の奴隷ものだ。

この身に刻まれた"刻印"が、その証で。



あたしの"価値"は、ただ、それだけ。


……ま、奴隷の身にしては
ずいぶん自由にやらせてもらえてるけどねっ