RECORD

Eno.386 カロの記録

記録

コツコツ鳴りゆくハイヒール。
薄暗く煙臭い 鳥に合わない夜の地下。
女が拵えたねぐらの奥から 微かに血の臭いがした。

あーあ、全部全部が無駄骨だったか?
おまえはまた、そうやって無邪気に、俺様の気も知らずに、
塗って重ねてうずたかく。死体の山を増やしたか。

「あんたがしっかり仕事をしていたら、私も売らずに済んだのかもね」

平たい瞳が兄を舐めた。

「はいはい、俺のせいだよ」

兄は素直に首肯した。
妹は気に食わぬ様子で鼻を鳴らす。

「どうして逃げるの。私の言うことを聞かないの」

お前を尊重したいからで、お前を許すべきではないからだ。
嗚呼全く!この世の何処に、家族が人道踏み外すのを 大人しく見ていられる者がいるだろう!
イカれたお前にゃ何を言ってもムダだろうから、口は噤んでただ見据えた。

女がイラついた様子で煙を吸う。
翼で薙いだ。その臭いは嫌いだ。

「帰ってくるからさ。お前も暫く店じまいしろ。
せめて、ここにいる間だけでも」

不貞腐れた顔は 小さな頃から微塵も変わっちゃいない。
変わったのは、俺がおまえの手を取らなくなったことだけ。

手は取らずとも、地獄の果までおまえと在るさ。かわいいかわいい俺の化け物