RECORD

Eno.492 レオンの記録

私は一般の家庭の生まれだった。
親は何でもない普通の会社員で、芸術家の血は流れていない。
ただ何となく絵に興味があって、だから絵で食べられたらいいんじゃないかとか、そういう浅い考えで始めた。
芸術系のハイスクールを経てセルエモ芸術大学に入って、何となくで色々勉強して……優等生らしい絵の描き方や、人に評価される絵は描ける傾向は取れるようになった。
人に評価される絵を描けるようになったのとは異なるのだと理解したのは、自分が描いた絵を売っても中々飛ばないし、案外人は見向きもしてくれないと判明してからだ。
学校の中で絵を描くのと、外で絵を描くのは根本的に違う。
評価形態も見る人も、そもそれで金を払うかという前提も何もかもが違う。

それがストレスになって……いや、元々興味はあったけど、それが切欠で煙草と酒も始めた。
落ち着いて冷静になるために、絵を描く為…と必死に理由を付けて逃げ道を探した。
何となくつるんでいた陽キャやグレてる不良グループとハメを外して落書きに勤しんだり、地元を縄張りにしているギャングの敷地に入ってチキンレースしたり、合間合間にバカやってたりもした。
ジュニア相当の学校の子で窃盗をしたり、つまはじきにされた子の世話も焼いて……。
優しさというより、現実から目を背ける行為に近しい。そうして忙しくして、趣味で絵を描く程度に肩の力を抜いてグラフィティすきなものを描いて、程々に出席して単位を取れば良いという逃げだ。

芸術家を自称しても、こだわりがあると言っても……少し何かができるからと、それが他人に評価されるものとは限らない。
色々偉そうなコトを語っていても、実績がなければ何もならない。
大学の内に起業ができる人はそうしているし、既に実績を持っている人は有名企業とタイアップや依頼ももらえている。
牙をもがれた獅子レオンなんてお笑い種だ。
でも、私はここにきてちょっとだけ評価された。
私の絵を素敵だと言ってくれる人がいてくれた。

観客を沸かせること、同じく戦う者らに認められること。
人を彩ることは場合によっては誇りを踏みにじる行為なのに、それでも評価をくれたこと。
そうしていいのなら……人を描きたいそうしたい、と。
壁に向けたグラフィティも好きだけど、人を彩る何かを成してみたい。
そうすることで何かが得られるのならば。