RECORD

Eno.254 死神トカリリの記録

死の刃

ほとんどの魔法使いが勘違いしているんだけど死神というのは
輪廻転生の管理者とかそういう大したものではない。
死んだ魔法使いの魂からはそれだけ強い魔法を回収できる。
〈司書〉が本を本棚の所定の位置に収めるのと同じ。
言ってしまえばこの死神っていうのは扮装コスプレにすぎない。
でもそんなに責められるようなことでもないと思う。
人間の扮装コスプレをしている連中だってごまんといるんだからさ。

何を期待している?
死神に。
女に。
死に。

何年か前。まだあたしが死神としての経験が浅かったころ。
港町に任務で出向いたことがあった。
魔法使い同士の抗争があって、結構少ないない人が死んだんだよね。
未練を残して死んだのが多かったからね。死神の出番ってわけ。

一通りの八つ当たり、勘違いの感謝、崇拝、それからついでにセクハラを浴びて。
ふらふらと、観光する気持ちで、比較的被害が及んでいない区域にあたしは歩いた。
すると、痩せた女の子が、一人で海辺に立っているのが見えた。
いくらか年下。十代前半ぐらいかな。
よしゃいいのに、あたしはそいつに後ろから近づいた。
クセになってんだ、足音を立てずに近づくの……

「ばあ」

首筋に大鎌の刃をあてた。

「ひ」
「いいのかい? こんなところに一人で。
 連れて行かれちゃうよ。悪い人に」
「あなた、死神?」

あたしは後ろからそいつの顔を覗き込んで、フードを被った顔を見せてやった。
案の定、今にも死にそうな顔をしていた。
なんとなくわかっちゃうんだよな。死神やってると。

「ねえ、お願い」

そいつは鎌にまったくびびっていなかった。
本当はびびっていたのかもしれないけど、泣いたりしょんべんちびったりはしなかった。

「わたしを死神にして」

しかもそんな懇願をしてくるもんだから、あたしは本当に自分の脊髄反射的な好奇心を憎んだ。
死神なんてろくなもんじゃない。
生きているのと同じぐらいには。