RECORD

Eno.3 マイリーの記録

その色は


頬を膨らませながら悪霊を追う少女の姿がそこにはあった。

割り当てられた寮の部屋から逃げるように扉を抜ける悪霊を見ると、
少女はその後を追いかけながら呼びかけ続ける。
痺れを切らした悪霊が壁を抜けると、少女が手当たり次第に
その周辺の扉をノックし始めたので、それ以降
悪霊は壁を抜けずに済む道を選びながら飛び回った。

もー! ガスー! ガスガスガスガスガスガスガスガスー!



あーーーもう。本当にしつこい。おもちゃで遊ばない時は呼ばないでくれ



どうして? おはなししたいだけだよ?



……その話が御嬢の幸せな話だった時が怖いから避けてるんだよ



なんていったのー? マイリーにもきこえるようにとまってー?



今、オレは一人の時間を楽しんでるからまた今度なー



…………マイリーのこと、ともだちじゃなくなっちゃった?



悪霊はピタリと動きを止めて振り返る。


そんなハズないだろ! 御嬢はオレの友達だ!



うん! マイリー、それはしってた。やっとこっちみたー



少女は卑怯な手を使い、悪霊はそれにまんまと騙された。

望んだモノの為なら体が傷つく事を厭わない少女と
望んだモノの為なら心が傷つく事を厭わない悪霊。

少女は嘘つきと呼ばれる事を極端に嫌う。孤立した過去の記憶を思い出し、心が傷つくから。
だが、少女は望んだモノの為に心が傷つく事まで上乗せレイズした。
覚悟の差。体を持たぬ悪霊に上乗せコールは出来ない。
この勝負は少女が切り札を切った時点で初めから勝敗が決まっていた。

マイリーね。ガスがせいちょうしてもみつけられるように、これ買ったの



少女の首から下げられているのは小さな瓶。中には赤いビー玉が1つ入っている。
悪霊はその瓶とビー玉を見ると不思議そうに言葉を返した。


……それがあるとオレが見えるってどういう事だ?



そっか。ガスはかがみにうつらないから知らないよね



このビーだまは、ガスの色。ガスの目はマイリーとそっくりのあか色なんだよ? だから、せいちょうしても。ここにいるよーってガスのこと見つけるからね!



悪霊は思う。あぁ、やはり話をするべきでは無かったと。


そうか、それはありがとな……じゃあオレは遊びに行ってくるからまたな



うん! いっぱいたのしんできてね!



少女は伝えたい事を伝え、満足そうに元来た道を戻って行った。
悪霊は大きなため息をつくと、過去の少女の姿を、試合中の少女の姿を懸命に思い返す。


大丈夫。オレはまだやれる