RECORD
Eno.61 ジュヘナザートの記録
マチェットを選んだのはきっと偶然ではなかったのだろう。
その切れ味の良すぎる刃はいつの間にかあたしの手元にあった。
まるでそれが似合いとでもそれを使うべきであるとでも言うように。

決してこのナイフも、扱いやすくは無い筈なのだけれど。
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8つ離れた姉。
次代聖女に傷を付け罪人と成り、下町に流刑と成った後に殺人鬼として馳せてしまった大悪党。
死を信仰し救済と呼んで刃を振るい続けた化け物。
果たして、それは狂人だった。
果たして、それは。
何かに狂わされた人なのだろうことを、知っている。
数えるほどしか、会ったことはない。
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本当は。
あの人が一番、敬虔であった事を知っている。
あの人が上に居る間、受けていた仕打ちも知っている。……それが、後にあたしの方へ来ることも。
確かに、大衆から見れば化け物であったその人は。善人であった、筈だった。
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誰の物とも分からぬ赤を纏いながら、刃物を片手に笑ってたって。
そのまま、あたしを見て『背筋が曲がっている』だなんて言い退けてしまう人。
怖くて、怖くて、最低な。
敬愛するべき姉であった。
関係のない話
マチェットを選んだのはきっと偶然ではなかったのだろう。
その切れ味の良すぎる刃はいつの間にかあたしの手元にあった。
まるでそれが似合いとでもそれを使うべきであるとでも言うように。

実際、それは初めて握ったはずなのに。
昔からの相棒の様に手に馴染んだ。
決してこのナイフも、扱いやすくは無い筈なのだけれど。
「……数えるほどしか、会ったことはないんですけれど。
あの人の所為で色々とメチャクチャですし、最悪な人生歩かされてるとも思ってますし。
恨みとか憎しみとか怒りとか。それ以上にあの人は怖い」
8つ離れた姉。
次代聖女に傷を付け罪人と成り、下町に流刑と成った後に殺人鬼として馳せてしまった大悪党。
死を信仰し救済と呼んで刃を振るい続けた化け物。
果たして、それは狂人だった。
果たして、それは。
何かに狂わされた人なのだろうことを、知っている。
数えるほどしか、会ったことはない。
『……ねえ、姉さん』『どうして、』
『何故と言うのは?』
『どうして姉さんは、まだ祈ることができるの?』
『確かにやったことは悪かったのかもしれないけれど、…そんなに……』
『そこまで、傷つけられなくても、』
『信仰とは、疑うものでは無いから――ですかねえ。
そこに当然と在る物を疑いはしないでしょう。だからこそ、裏切られたのなら』
『……、』
『――……良いですか、ナズ。あたしは後にここを追われる事になるでしょう。
そうすれば、後は貴女に矛が向くのかもしれません』
『……許さなくとも、構いませんから』
本当は。
あの人が一番、敬虔であった事を知っている。
あの人が上に居る間、受けていた仕打ちも知っている。……それが、後にあたしの方へ来ることも。
確かに、大衆から見れば化け物であったその人は。善人であった、筈だった。
「それでも、嫌いになれないんですよ、なんでか。
あんなんでも家族だって思ってますし、あんなんでもあたしを妹だって見てくれた。
ただのクズだったら憎めたのかもしれませんが、そんな人ではなかったんです」
誰の物とも分からぬ赤を纏いながら、刃物を片手に笑ってたって。
そのまま、あたしを見て『背筋が曲がっている』だなんて言い退けてしまう人。
怖くて、怖くて、最低な。
敬愛するべき姉であった。