RECORD
Eno.563 一つ目の蜻蛉の記録
薄翅:Ⅶ(終)
学校の単位を急ピッチで取って、卒業資格を得た。
家を出たい、と家族に伝えた。
当然両親は大反対で、何度も家族会議になったけど。僕はどうしても折れるわけにはいかなかったから。「もう大人になるんだもんね」と、母が寂しそうに言うまで。そして父が遠くから、悪路の中わざわざ家までやってきて、「──そこまで、ヨウがしたいことなら」と苦々しそうに、でもどこか納得をして言うまで、僕は両親を説得した。
プロのプレイヤーになる。見ている人を楽しませ、相手に礼を尽くす、戦士になりたい。
そのための養成校に行く、というのは建前で、申し訳ないけれど。嘘はなるべく、少なくしたつもりだ。
僕を送るまでという名目で、父は家に長く滞在してくれた。初めて会ったリアルの父は、僕によく似た顔をしていた。家族3人で食べた料理はやはり人工の食べ物ではあったけれど。でもこの味のことを、一生忘れない。
タクシーに二人並んで乗り込んで、別れ際に。
「お前が決断したことなら。父さんも母さんも応援しているよ」と。
そう言った父のことも、忘れない。
僕は。
この世界のことに、しっかりけじめをつけたかった。僕が育ったバーチャルとリアルの二つの世界。嘘っぽく感じてしまっても、でも僕はここから来た。からには、礼儀を尽くしたかった。僕を育ててくれたものたちに。
空には満ちかけの月が浮かんでいた。18になった、夜。
ネットカフェを探すのに苦労した。無人のカウンターで受付を済ませる。他に客はいなかった。
ほとんど空のスーツケースを置いて、VRスタジオの中へ入る。サポーターを装着、ヘッドマウントディスプレイを身につけて。
生体認証。
-----

──アラートがうるさい。
でも、これが僕の決断したことだ。
邪魔なんて、させてやるものか。
僕は。
留め具に手をかけて。




槍を構える。
この歓声が。
この戦場が、僕のこれからの、
唯一の居場所だ。

家を出たい、と家族に伝えた。
当然両親は大反対で、何度も家族会議になったけど。僕はどうしても折れるわけにはいかなかったから。「もう大人になるんだもんね」と、母が寂しそうに言うまで。そして父が遠くから、悪路の中わざわざ家までやってきて、「──そこまで、ヨウがしたいことなら」と苦々しそうに、でもどこか納得をして言うまで、僕は両親を説得した。
プロのプレイヤーになる。見ている人を楽しませ、相手に礼を尽くす、戦士になりたい。
そのための養成校に行く、というのは建前で、申し訳ないけれど。嘘はなるべく、少なくしたつもりだ。
僕を送るまでという名目で、父は家に長く滞在してくれた。初めて会ったリアルの父は、僕によく似た顔をしていた。家族3人で食べた料理はやはり人工の食べ物ではあったけれど。でもこの味のことを、一生忘れない。
タクシーに二人並んで乗り込んで、別れ際に。
「お前が決断したことなら。父さんも母さんも応援しているよ」と。
そう言った父のことも、忘れない。
僕は。
この世界のことに、しっかりけじめをつけたかった。僕が育ったバーチャルとリアルの二つの世界。嘘っぽく感じてしまっても、でも僕はここから来た。からには、礼儀を尽くしたかった。僕を育ててくれたものたちに。
空には満ちかけの月が浮かんでいた。18になった、夜。
ネットカフェを探すのに苦労した。無人のカウンターで受付を済ませる。他に客はいなかった。
ほとんど空のスーツケースを置いて、VRスタジオの中へ入る。サポーターを装着、ヘッドマウントディスプレイを身につけて。
生体認証。
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──アラートがうるさい。
でも、これが僕の決断したことだ。
邪魔なんて、させてやるものか。
僕は。
留め具に手をかけて。




槍を構える。
この歓声が。
この戦場が、僕のこれからの、
唯一の居場所だ。
