RECORD

Eno.306 スオジィエの記録

昔噺3


龍は愉しみを憶えた。
ながい眠りから目覚めた後に以前の記憶を辿って村に向かったが、村は既に失われていた。
そこは既に河に飲まれ、清らかな流れが続いていた。

龍はそこからまた歩み続け、新たな人の村を見つけた。
人々に紛れ、手合わせを願い、愉しみを得た。

十分に愉しみを得たあと、龍はながく眠った。
眠りから目覚めた後、以前の村に向かう。
村の人々は既に何処かに失せており、龍は別の村を探す。
人々に紛れて愉しみを得る。
満足して山に帰り。ながく眠る。目覚める。
記憶をたどって村を探す。失われている。別の村を探す。

眠りはあまりにながく、深く、龍は数百年を眠る。
目覚めるたびに何かが失われている。
目覚めたときの龍の記憶は何時でも朧だが、愉しさと好い記憶だけが残っている。

龍は、微睡んでいても唯其処にあれば河を宥めることができる。
然し、それは微睡みの中であればこそ。

深い眠りの中では、龍は機構足り得ない。





既に世界は安寧を得て久しく、全ての機構が止まり滅んでも荒狂いはしない。
少しばかりの大地の動乱は世界を最早壊さない。
然し、そこに生きるものは十分に殺す。