RECORD

Eno.374 ぺルシルの記録

桔梗の花よ

「どーすっかな。
 持ってくって言っちまった以上はなぁ……」


 街を歩く男が一人。
 何やら良さそうなものを見つけては、これじゃないと没にして。
 そんなことをして何を探しているかと言うと、女剣士への贈り物の選別なのだが。

「……ん?こりゃ桔梗か?」


 ふと立ち止まったのは花屋の前。異世界の花を取り扱っているそうな。
 よく見えないので、サングラスを外してじっと見てみると、そこには馴染みの花。
 桔梗の名を冠する組織が身近にあるものだから、その生態や花言葉やらなんやらは調べたことがある。

「確か誠実とか、永遠に愛しているとか、そんな感じの……」

「いいじゃん、これにするかこれに」


 店員と話し、桔梗が何本あるかを訊ねる。
 聞くと110本だというから、束ねるなら100か99か……意味を考えると99本かな。
 試しに99本束ねて貰ったが、とても迫力のある花束になった。
 持ち運びに困りそうだが、見栄えは悪くない。

「良いなぁ。これを渡すのアリだわ」

「……渡すのかぁ、これを」


 想像するだけで恥ずかしくなってきた。
 恋愛周りは苦手だ。学生時代は呪いが怖くてできなかったし、影響が少ないと知ってからも、仲間の事やら何やらでそんな暇は無かった。
 故にこそ、今こうしている自分が不思議でたまらない。

「……怖気ついちゃ駄目だよな……」

「……よし。すみません、お会計お願いします」


 こうして、贈り物がひとつ決まった。
 花束なんて、墓参りでしか持ったことがないから……新鮮な気分だ。