RECORD

Eno.232 シャルティオ&キィランの記録

くうはくのこころ

 
 サーニャさんが死んだらしい。
 死んだんだって、もう二度と会えないんだって。
──死んだんだって。

 僕は僕で悲惨な人生を歩んできていたかも知れないけれど。
 それでも、親しい人の死を経験したことは、
 これまで、なかったんだ。

 記憶にない頃に死んだ父さんに思い入れはない。
 他の家族は死んでいない。
 特に親しい友人もいない。
 それが、これまでの僕で。

 自分の死は感じていたくせに、
 けれど周りに、死はなかった。

   ◇

(記録はこの辺りで、文字が乱れている)

 どうして どうして しんだの
 まえから なんとなく けはいは していた
 でも ほんとうに いなく なるなんて

 むねが いたくて たまらないんだ
 こころに くうはくが できた みたいだ
 いたいよ くるしいよ ねぇ

──なくなったはずの、焦燥を思い出した

 はしらなきゃ こえなきゃ ぼくは
 あぁ ぼくも おさけに よえたらな
 そしたら いたみも まひ したのかな

 わかんないや わかんない
 はしる いみも みうしなってきた
 でも はしらなきゃ はしっ て

  ◇

 抱く虚無に痛みに耐えられなくて。
 毒が肌を灼くのも構わないで、僕は泣いたんだ。

 どうして だよ
 あなたは あんなにも したわれていたのに
 あいされていたのに ねぇ ね ぇ