RECORD

Eno.3 マイリーの記録

きっと、それがあそび


少女はラムネを片手に応援席で試合観戦をしていた。
手に怪我をしてからは、一度も参加する事の無かった
玩具武器を使って遊ぶ戦う様子を不思議そうに眺めている。


……あそびってなんだろう?



少女は改めてその意味を考える。
小さな瓶と赤いビー玉はその答えを教えない。

楽しい事とそうではない事なのかと思ったが、遊び以外にも楽しい事は多い。
相手が居る事とそうではない事なのかとも思ったが、遊び以外にも相手が居る事は多い。
だから、それ以外の答えがあるのだろうと小さなレディは考えた。

抱きかかえられて試合会場へと移動したのは遊びではなかった。
一緒に話したり、散歩をしたり、食事をすることは遊びではなかった。
ラムネを鳴らす事は遊びではなかった。
手紙を送り、返って来た手紙を読む事は遊びではなかった。
頭を撫でたり、撫でられる事は遊びではなかった。

ボールをバットで遠くに飛ばして、飛ばされないように投げる事は遊びだった。
ビー玉を弾いて落とし、たくさん手に入れる事は遊びだった。
シールを顔に貼り付け、貼られる事は遊びだった。

玩具武器を使って叩いたりする事は遊び戦いだった。


……あれ? もしかして。マイリーわかっちゃったかも



少女はある答えに行きつき、それが正しいのではないだろうかと思う。


ボール遊びは遠くにボールを飛ばす遊び。
ボールがバットに当たって遠くまで飛んで行けば楽しくて、
バットが空を切ると、次は当てるぞという思いを持ちながら楽しんだ。

ビー玉遊びはたくさんビー玉を手に入れる遊び。
ビー玉を弾いて落とし、たくさん自分のモノにすると楽しくて、
弾いたビー玉が他のビー玉を落とさなかった時、
次はたくさん自分のモノにするぞという思いを持ちながら楽しんだ。

シール遊びは一枚ずつ好きなシールを貼り合う遊び。
きちんとシールが顔に貼れると楽しくて、
後で鏡を見ると自分が貼ったモノより綺麗に貼られていて、
次は斜めにならないようにきちんと貼るぞという思いを持ちながら楽しんだ。

そして、おもちゃを使った遊びは……


かちとまけがあって、じょうずにできるとうれしくてたのしいのがあそび!



少女は当初、痛みに驚いてその遊びを
どうやって皆と同じように楽しめば良いのかと考えていた。
その答えを得ないまま何度もそれを繰り返していくうちに、少女はおもちゃを扱うのが上手になった。
こんな事も出来るんだよ。こういう使い方もあるんだよ。
そうして試行錯誤しながらそれが上手くいき、勝利すると誇らしい気持ちを抱いていた。

あの遊びは痛みをもたらすだけではない。
自分がどれだけ上手くその遊びが出来るのかを見せつけ、勝利を目指すモノ。
そう考えると少女の中で、その遊びに楽しい瞬間も多かった事に気が付く。


マイリー、じょうずにあそべるほうがたのしい



悪霊には少女がその答えに至った事を知るすべはない。
少女はその遊びで受ける痛みを克服した訳でもない。
だが、安心出来る居場所となってくれる存在を手に入れた少女の心には余裕が生まれ、
この場所に来てからの事を振り返れるようになった。

ここからもうすぐ別の世界へと旅立つ。

その前に少女はこの場での遊びが、少女の中で確かに遊びであり、
他の人達が楽しそうに笑っていた理由に近づく事が出来た。


マイリーならあのおもちゃは……マイリーなら……



少女は試合観戦に熱が入る。
ただの女の子は、戦う事も遊びとして楽しめる女の子へと成長した。
それは一見、いびつなモノに見えるかもしれないが、今までとは大きな違いがあった。

痛みに慣れた訳でも慣れようとしている訳でもない。
ただ純粋に自分は凄いのだと、自分は相手よりも強いのだと、
勝利を以って証明する事が楽しい事であったと、自分の中で正しく理解出来ただけなのだから。

少女はまだ行き先を決めていないが、外の世界へと旅立つモノを購入して
大切な人にそれをプレゼントし、一緒にここから去るという決断を変える気はない。


ただ、フラウィウスへの招待状は、確かに闘技者となれる素質を持った者へと届いていた。