RECORD
Eno.191 ルシアン・ブラックの記録
世界に帰るのは意外にもあっさりだった。
3か月、消えていたのかと思ったけれど、どうやら時間は経ってなかったらしい。
気づけば座り心地の悪い馬車の中で、いかついおっさんに囲まれて座っていた。
持ち物だけが増えてはいたが、あんまり不審がられなかった。
よく分からないがまぁ、好都合だ。そのまま王都までもう数日。
やがて辿り着いた王都では、護送用の馬車が目立つのだろう。
大通りに人々がせり出して、こちらを怪訝な目で見つめていた。
格子の入った窓の隙間から辛うじて見える王都の町並みは、
あの闘技場の街と変わらない、賑やかで整った雰囲気をしていた。
何となくノスタルジーを感じる。笑えるな。そんなに長い間過ごしてないのに。
クソつまらない裁判が終わった。
当たり前だが、俺は死刑になるらしい。
まぁ弁護するやつもいない、本人も罪を否定しないとなったらそりゃそうだ。
俺はほとんど黙って聞いてたが、最後の最後で口を開いた。
『被告はギロチンの準備が整い次第────』
「なぁ。ギロチンじゃなくて、俺の持ってたナイフを使ってくれねぇか?」
「ギロチンよりよっぽど見せしめになると思うんだがね。」
お偉方は不審な顔をしていたが、押収されたナイフを見ては息を漏らした。
そりゃ当然だ。この世界にはない金属を使って、この世界にはない技術で作られた、
この世界に現存するどんな武器よりも業物のダガーなのだから。
どこでこんなものを、なんて問い詰められもしたが、拾ったんだよ、とだけ答えた。
『しかしこの刀身の波打ちはなんだ。これでは痛みを増すばかりだ。』
「そうだろうな、だからギロチンよりも重罪人の首を斬るにはいいだろう?」
「"世界一人道的な処刑具"を、人道から外れた人間に使うよりはさ。」
「きっと、罪を犯そうだなんて考える奴は減ると思うよ。」
お偉方は随分悩んだようだったが、渋々頷いてくれた。
罪人一つの命を使って、向こう何年かの平和の礎とできるなら、
要求を呑んでもメリットの方が多い、そう考えたんだろう。
さて、処刑の決まった罪人に食わせる飯も惜しい。
執行の日はすぐに訪れた。
広場に集まる人々の前で、お偉いさんが仰々しい文章を読み上げている。
罪状だとか、処刑方法だとか。
周りの人間の軽蔑した目が突き刺さる。
そう邪険にすんなよ。今から死ぬんだからさ。
刃が首に当てられる。
引かれ、押され、痛みが走って桶に出したものが溜まる。
あぁ、終わりだな、これで。
ちゃんと死ねてよかったな。
ゴトッ
ぼしゃんっ
めでたし、めでたし。
予定調和の結末
世界に帰るのは意外にもあっさりだった。
3か月、消えていたのかと思ったけれど、どうやら時間は経ってなかったらしい。
気づけば座り心地の悪い馬車の中で、いかついおっさんに囲まれて座っていた。
持ち物だけが増えてはいたが、あんまり不審がられなかった。
よく分からないがまぁ、好都合だ。そのまま王都までもう数日。
やがて辿り着いた王都では、護送用の馬車が目立つのだろう。
大通りに人々がせり出して、こちらを怪訝な目で見つめていた。
格子の入った窓の隙間から辛うじて見える王都の町並みは、
あの闘技場の街と変わらない、賑やかで整った雰囲気をしていた。
何となくノスタルジーを感じる。笑えるな。そんなに長い間過ごしてないのに。
クソつまらない裁判が終わった。
当たり前だが、俺は死刑になるらしい。
まぁ弁護するやつもいない、本人も罪を否定しないとなったらそりゃそうだ。
俺はほとんど黙って聞いてたが、最後の最後で口を開いた。
『被告はギロチンの準備が整い次第────』
「なぁ。ギロチンじゃなくて、俺の持ってたナイフを使ってくれねぇか?」
「ギロチンよりよっぽど見せしめになると思うんだがね。」
お偉方は不審な顔をしていたが、押収されたナイフを見ては息を漏らした。
そりゃ当然だ。この世界にはない金属を使って、この世界にはない技術で作られた、
この世界に現存するどんな武器よりも業物のダガーなのだから。
どこでこんなものを、なんて問い詰められもしたが、拾ったんだよ、とだけ答えた。
『しかしこの刀身の波打ちはなんだ。これでは痛みを増すばかりだ。』
「そうだろうな、だからギロチンよりも重罪人の首を斬るにはいいだろう?」
「"世界一人道的な処刑具"を、人道から外れた人間に使うよりはさ。」
「きっと、罪を犯そうだなんて考える奴は減ると思うよ。」
お偉方は随分悩んだようだったが、渋々頷いてくれた。
罪人一つの命を使って、向こう何年かの平和の礎とできるなら、
要求を呑んでもメリットの方が多い、そう考えたんだろう。
さて、処刑の決まった罪人に食わせる飯も惜しい。
執行の日はすぐに訪れた。
広場に集まる人々の前で、お偉いさんが仰々しい文章を読み上げている。
罪状だとか、処刑方法だとか。
周りの人間の軽蔑した目が突き刺さる。
そう邪険にすんなよ。今から死ぬんだからさ。
刃が首に当てられる。
引かれ、押され、痛みが走って桶に出したものが溜まる。
あぁ、終わりだな、これで。
ちゃんと死ねてよかったな。
ゴトッ
ぼしゃんっ
めでたし、めでたし。