RECORD

Eno.186 軍人の記録

軍人の記録8【終】

ロッカへ

お兄ちゃんだぞ。そっちは元気か?
そろそろ闘技場との契約期間も終わりそうだ。
もう少ししたら帰ると思う。
渡航券があれば自由に行き来ができるらしい。便利だな。

それはさておき頼み事があって連絡をした。
こちらの世界で出会った子を二人ほど迎える手伝いをしてほしい。
後で本人とも相談することになるが、庭園の警護の仕事を紹介したい。
庭の手入れは恐らく教えないといけないが
傭兵の経験はあるらしいから直ぐに役に立ってくれるだろう。
もう片方はまだ学校に通う年齢の筈だから、ミスミにも伝言をしてくれないか。
仮に学校に通わないにしても、勉強の手助けはしたいから。

それと家を見つけるまでの宿か何かも探しておきたい。
僕らがおじさんやおばさん達に世話になった恩を他人に返す時が来たのだと思う。

色々、手続きは早い方が良いからな。頼むよ。

p.s.
帰ったらハムちゃんシールを貼ってあげよう。
おみやげもあるぞ。



「いるかド阿呆が」


「あらあら、お手紙投げたりしちゃだめよロッカ。
 折角送ってくれたのだし」


宙に投げつけた便箋は、振りかぶった際に生じた空気の流れを受けて不規則に舞う。
赤毛の女が指先をくいと引けば、手の上に紙が落ち着いた。
便箋の柄をなぞって、向日葵かしら、なんて笑う。

「まともに連絡寄越したと思ったらこれだぞ。
 なんだってわざわざうちの国に…」


「事情があるんでしょう、きっと。
 お話は会ってからゆっくり聞けばいいわ」


手紙を畳み、丁寧に封筒に仕舞う。

「ロッカもお兄ちゃんが帰ってくるのは嬉しいもんね?」


「うるせぇよ……。
 準備するならさっさとやるぞ」


もだもだ、小言を零す銀髪を適度になだめながら会話は続く。
本気で嫌がっていないと判っているからこその光景だった。
つつがなく、歓迎の準備は進められたことだろう。



「くしゅんっ」


「………風邪か?」