RECORD

Eno.44 ブルーバードの記録

◆9月30日、天浅葱の日記

手に汗握る試合も終わり、夜の帳がフラウィウスを包む。
酒場はさながら試合の二次会のようで、オフシーズンに入る前夜に相応しい賑わいを見せていた。

思えば、自分の心はずっと殺してきた。
その立場に相応しく在ろうとすればする程、心などというものは邪魔だったからだ。
自己主張せず、ただその場に、それとして在れば

……それの結果が、今だという事実に……私はいつから向き合えなくなっていたのか。



天浅葱あまあさぎという名は、適当につけた。
青い名。青い空。あの日、手が届かなかったもの。
掴めず散った……自分の命に贈った。
名前も思い出せない幼い姫だった自分に、何もできなかった自分に、せめて美しい名があったらいいと思った。


帰ろう、と声をかけてくれる貴方の手を取る。
……温かい。
その温度を邪魔するかのように、左手が赤に光る。
””近い””、そんなことは……わかっている。


貴方の背中には、夥しい数の傷。
それを撫でても、特に嫌な顔はしていなかったように……思う。

私が貴方にできることはきっと、そう多くはないけれど。
……この夜が、貴方に優しく…………ありますように。