RECORD

Eno.116 アリィーの記録

届けられなかった手紙



*静かになった部屋の中* *かさかさと便せんが揺れている*
*酷く稚拙な鉛筆の細い線* *消して擦ってよれた紙*

*酷く読みにくいから* *躊躇って*
*躊躇っている内に動けなくなった*

*そんな手紙*

*見つけたアナタ・・・は* *それを届けようとしても良い*
*届く事は* *無い* *かも知れないが*



『ターくんへ』


『きみがこれをよんでいるということは ぼくはしんだということです
 というのを1ど いってみたかった どうですか
 ぼくのかちですか まけましたか』



*どっちが先に死ぬか* *競争だよ*
*そんな馬鹿みたいな話* *先の方が寂しくないから*
*後だと悲しいから* *嫌だってだけだった*



『ぼくはさいごまで なるべく1りがいいだろうと おもっています
 きみならわかるとおもうけど いきもののさいごはきれいじゃないから
 そういうの みられたくないよね ぼくもそうおもいます』


『きみとさいごまでいたら ぼくはとてもくるしくてかなしいし
 ターくんにもそういうおもいを させるかもしれないし
 それってたぶん すごくざんこくで こわいことなんです』


『だから1りがいいです きみを1りにしたように』



*誰とも居られないからね* *キミとはもっと居られないって* *知ってたし*
*でもなあ* *キミ* *絶対全部分かってくれるだろ?*
*僕それを分ってるからさ* *キミも分かってる事を多分分かってるからさ*
*あれが1番* *最良だと思うんだ*



『もし そうじゃなかったら どうしようか
 きみは また ぼくをゆるしてくれますか』


『いつもみたいに しょうがないな ってかおして
 ゆるしてくれますか かなしくはならないですか』



『きみがくるしまず しあわせだとうれしいです
 だから もしもぼくがきみを くるしめたならかなしい
 しんだあとは あやまれもしないから さきにあやまっておきます』


『でも ゆるさなくてもいいです』



*そればかりは* *キミが決める事だし*
*僕は確認する術も無いんだから* *どっちでも良いか*
*あんまり怒らない気もするし*



『ターくん きみは しあわせでしたか
 ぼくは しあわせでした』


『ありがとう』



『また』



*最後だけ悩みに悩んで* *幾度も書き直した*
*それで* *やっぱり* *キミの“またな”が思い浮かぶから*

*不本意だな* *有り得ないと知りながら* *また理想を重ねてしまった*