RECORD
放置された手紙
*静かになった部屋の中* *かさかさと封筒が揺れている*
*酷く稚拙な鉛筆の細い線* *消して擦ってよれた紙*
*最期までいたとしたら* *気づくかな*
*そう思って置いといた*
*そんな手紙*
*見つけたアナタは* *それを持ち帰っても構わない*
*その為に* *そっと置いてあったのだから*

『ミカゼへ』

『さいごまで いてしまいましたか
かなしかっただろう くるしかっただろう つらかっただろう
ごめん そのすべてに こたえてやれませんでした』
*拭う指* *寄せる腕* *埋めてやる胸も無い*
*死ぬってのはそういう事だ* *何にも出来なくなって*
*何にも残らなくなって*
*誰かを* *酷く傷つける事なんだ*

『それを うれしいとおもうのと
うれしくないとおもうの どっちもあって
ぼくは ひどくむずかしいきもちになります』

『どっちがただしくて どっちがまちがってるのか
いまのぼくにはわかりません まだぼくは いきていたし』

『きみからみて さいごのぼくは どうでしたか』

『よろこんでいるふう でしたか
かなしんでいるふう でしたか
ちゃんとわらって やれましたか ないていましたか』

『きみに どんなふうに うつりましたか
どんなふうに おもいましたか』

『あんまりわるいかんじじゃないと うれしいです』
*笑っていようと思ってたんだ* *この時は*
*怖くないさ* *平気だよ* *って*
*結果は* *キミの知る通りだったが*

『きみは このさきうんとながいきをして
いろんなひとにであい はなし ものをみて
すきなもの きっとたくさん できるんだとおもいます』

『ぼくはもう きみをみちびくことはないし
どこかにいるわけもなければ しゃべることもありません
だから きみは ちかくにいるひとを たよってください』

『こまった かなしい つらい そんなとき
もういない ぼくにすがっても いみがない
いきているうちは いきているものを みて
しんだものは きみに なにもしてくれません』

『ぼくもそうです』

『このさきのきみに ぼくはなにもしてやれません』
*キミの心が折れそうな時* *いつもみたいに泣きじゃくった時*
*どんな辛い事があっても* *悲しい事があっても* *何も* *何も*
*僕は幽霊ではないし* *心に巣食う虫でもない* *つもりなんだ*
*死んだものに縋るなんて* *してくれるな* *ミカゼ*

『きみは』
*キミは*

『じゆうな かぜです つよい ひとです
きずついても たちあがることができて
まちがっても それをただすことができる ひとです』

『ぼくがすきなのは そういうところです
いつまでもうつむいたままじゃない しあいちゅうにも ぎろりとにらむ ところです』

『ぼくのすきな きみで いてください』

『さいごまで』
*それで* *終わり*
*それ以上は何にも書けなかった*
*最期になるべく伝われば* *それで良いと思って*
*伝わったかな* *確かめようも無いけどさ*
*伝わっていると* *嬉しい*