RECORD

Eno.32 スプレンドーレ・テンポラーレの記録

スプレンドーレ

 ピッコラが巨人族の在り方に反した本を持っている。

 そう告げ口をしたのは長女のカンピオーネでした。

 巨人族にとって、巨人族を従えた人間の勇者の英雄譚は面白くないもの。
 それに、勇者の仲間であった元巨人族の王はテンポラーレ家によって滅ぼされた巨人族の汚点でしたから、『巨人族の在り方に反する』という言い分も無理はありませんでした。

「それでも、どうして今更そんな告げ口を?」

 家族と家臣に囲まれる中、ピッコラがカンピオーネに尋ねると、返ってきたのはつまらない答え。

「ちっちゃいからってアンタが可愛がられているからよ。アタシが『一番』で凄いはずなのに、『大したことない』アンタが!」

 だから、ピッコラは思い知らせることにしたのです。自分の方が強く凄いということを。

 密かに練習していた『魔法』を使って、彼女は長女を荒れ狂う風刃の中に放り込みました。

 謝罪の言葉を口にしながら切り刻まれる長女はやがて事切れて。

 ソレを見ていた家族たちには衝撃が走りました。

 小さい身体でありながら巨人を殺したこと、巨人の血を引いていながら魔法を使えることに驚愕する者。
 姉を殺されたことに怒り狂って返り討ちに遭うもの。
 ただ拍手だけをしてピッコラを讃える者。

 嵐のような騒動が収まった後、何も動じずに事の始終を見ていた王が仰りました。

「すまなかった。お前に『ピッコラ』などという名前をつけてしまったことを反省している……その強大な力、巨人族の輝かしい未来を想起させる素晴らしいものであった」

 王の言葉を賜ったピッコラは、ニコニコと一つおねだりをしてみたのです。

「輝かしい、『輝き』……うふふっ、でしたらお父様っ! これから私は『スプレンドーレ』と名乗ってもよろしいでしょうか?」
「古代巨人族語で『輝き』や『素晴らしい』という意味を持つ、スプレンドーレに!」

 こうして、スプレンドーレ・テンポラーレは誕生したのです。