RECORD

Eno.73 天使『ハム』の記録

あきべや

天使がもってきたものは、おおくはない。
よって、もちかえるものも、おおくなかった。

数枚の金貨と一枚の銀貨。
無銘のトロフィー。
ナイフ。
二つの花束とカード。

そういったものを、もちかえった。

おおくの武器支給品は闘技場側に返された。
別世界にきえたのは、“黄昏”となづけられた刀だけ。
網も、曲刀も、すべておいていった。

「ひとはなぜ、ものをのこすのだろう」


「だれかのおもいでに、のこりたいからだろうか」


わからないことはおおい。
げんに、じぶんもいくつかのものを、
べつのせかいにのこした。

「はなは、かれるんだよ」


「アルフレッドは、そういっていた」


じぶんも、はなにすればよかったろうか。
そうすれば、のこりすぎることも、なかったろう。

「おいていくことは、ちっともこわくないけれど」


「いずれこれも、ゆがんでしまうのかな」


おもいでを、にんげんにふみあらされたりして、
こえもおもいだせなくなる日が、くるのかな。

天使がいくつまでいきるのかは、わかっていない。
おおくが、天寿をまっとうするまえに、戦争で死んでしまうからだ。
じぶんもそうなるだろう。

「なにがいちばん、わがままなんだろうな」


それがわかるほど、にんげんとのつきあいが あるわけでもなく。
それをしることも、しばらくはないだろう。