RECORD

Eno.134 タニムラ ミカゼの記録

業務日誌
 谷村 三風


 左利き用の園芸ハサミと、花を包んでやる紙。準備はこのくらいだろうか。
 ハサミを今更買い直すのも億劫で、自分が使っていたのを送ってもらった。左利き用というのが店頭にあまり無いせいだが。

 久しぶりの聞いた仲間クローン達の声は相変わらず喧しい。なんでハサミが必要だとか、引き籠もりだとか。
 依頼が来た、とか。

 内容を確認すれば、詳細が伏せられた戦闘依頼。依頼を受けて詳細を話すというものだが―― 当然、こういう時は大体何かある。

 県内の依頼は上司ではなく自分に委ねられている。いつもなら、どんな依頼も引き受けると言って、確認もせず承諾していた。

 ただ―― 今回は、何故かするべきではないと勘が働いている。
 自分でも分からないのだが―― それだけ怪しいと疑っているのか? いや、この手の依頼は既に何度か受けている。

 自分が……生き長らえようと思ったから?
 今、死に敏感になっているから?

 自分が初めて、断ろうと言った。
 仲間クローン達は当然驚いた。

 受けるものだろうと思って準備していたらしい。