RECORD

Eno.116 アリィーの記録

花上げ


 アリィー。以前俺たちは土に帰らないって話したことがあったよな。


 死体は火で燃やされて、骨は壺に入れられ墓石の下に入れられる。
 身体のほとんどが煙になって、風に流されていく。火で燃えきらないのが骨だ。


 その骨を壺に入れていくんだが、それを遺族たちがやるんだよ。不思議だろ?
 身内や愛しい人を亡くして苦しいのに、変わり果てた姿を目の当たりにして、それを箸という二本の棒を使って壺に納めていくんだ。


 変な風習だよ。けど、これが結構大事で。
 あの世への橋渡し。故人へ向けてるんじゃない。生きてる側が、この人はあの世へ行ったんだと理解するための、お別れをするための儀式。


 君から咲いた花を摘むのも、それに似たものなんだろうなって思った。


 仕上げに、指だったものから指輪を外して。コレは自分用。
 他にも花束を作れたら、君が死んだと知らせたい人のところにコッソリ置いてきてあげよう。


 全部摘むのは、やめておく。
 この花が種を作れなくなるのは惜しいから。


 君を苦しめ、君から咲いた花。君が居た証拠。
 この花は証拠であって、君ではない。君の代わりでもない。
 君はもう、どこにも居ないのだから。


 種が出来たらどうしような。持ち帰って育てられるかな。山からの風が強い、寒いところなんだけど、広くて長閑なところなんだ。
 けど、一部はここで育てようか。君の好きな場所だし。


 そこから、風に乗せられてもっと広がると良い。外来種問題? うちも此処も、そんな事気にしてるような社会でも無いだろうよ。

 好きな所で咲いて、会いたい人に会いに行けばいい。
 それまでの手伝いは、俺がするからさ。


 だって、アリィー。君を愛していたんだから。