RECORD

Eno.470 ████の記録

アムネシアの回顧録04



「じゃあな───アルアのオッサン。お達者で」


仕事が終わった。
見慣れた風景の中で、人だけが分からない。
一ヶ月も通い詰めたその場所に覚えがあるのに、歩く人々の面影がぐちゃぐちゃになっていく。
異様な光景だった。けれどもう何度目かも分からない、馴染みのある光景だった。
仕事が終わるといっつもこうだ。やんなっちゃうね全く。



目の前に立っている、見ず知らずの人・・・・・・・に少し驚いた。
直前まで話してたって事か。珍しい。仕事終わりは大体一人なのに。
適当に挨拶をブン投げて、もう名前も顔も分からないオッサンの前から立ち去った。

手帳を開く。所狭しと書き込まれた同僚達の名前が載っている。
この一ヶ月、誰とどういう交流をしたか、何が楽しかったのか、何に意味を見出したか、俺が何を感じたのか。

書き残して記憶に残したいと思ったことは何か。
人との交流を経て、俺が忘れたくないと願ったことは何か。
いつにもまして多いそれに目を通す。
どうせ読み終わったらこれもその場限りの情報断片になるだけだ。
訊ねられた時に相手との齟齬が生まれないようにそれっぽく話を合わせる為のヒントにしかならない。

だから意味なんて無いはずなのに。
























「なんだこれ」

「写真だ」

「酒場か?」

「沢山写ってる」

「俺も写ってる」

「確かに酒場が盛況だった記憶はあるな」

「誰と何を話したかなんて覚えちゃいねえけど」

「正直これを見ても、もう誰が誰なのか見分けもつかない」

「でも、そうだな」






























しみじみと良い写真だな、と思った。