RECORD

Eno.179 アルア・フィフスの記録

劣等感

「理性的に、試合後の一礼と感謝がなくては
 舞台の上の闘争を酒場まで持ち込みかねませんからね!」

「自分はこのように皆様とは大きく違う種族でもあるので
 礼儀、マナーはいっそう気を付けたいのです」


「私より理性的じゃないですか? 昆虫」

「理性ってどうやったら生えますかね」

    \「おっさんは酒やめるトコからだね~」/



あの酒場の中で、恐らく私だけが彼を見下し差別し
そうして勝手に、何か良くない感情を感じていた



「私は種族が違うものですから、
 人より多く人の文化を体験し学習せねばと思っていた時期がありまして……」

「ただ、多くの文化は一人一人受け取り方が違い
 正解がないということも学びました

 食べ物や異性の好みといった、善悪とは異なる良し悪しがあると」

「文化教養思いやりすべてにおいて昆虫に勝てない」




劣等感?


気が付きたくなかった。
認めたくはなかった。
昆虫にだ。

どうしようもない溝を
学びとか理解とかそういうもので埋められるのだと。

「…………」

例えば私にも
何かを学ぶ為の土台や機会があったならば
自分が化物と知りながらも、人と共に在る努力が出来たのかとか

『もしも機会があったならば』
それすらも環境の所為にするしかない自分に気付いて
ただ酒の量が増える


「……………………」

「まっとうに生きたかった………………」

結局のところ
私にはそんな機会は無かったし
何もかも今更だし、どうでもいいし

余命を過ごしている