RECORD

Eno.134 タニムラ ミカゼの記録

風渡





*ああ* *確かにそんな話をしたね*
*随分遠い* *昔の話のようだ*




*立ち昇る煙* *そうして霧散するならば* *それも良いなと思った*
*土に埋まるよりかは* *誰かの腹に入るよりかは* *自由だろう?*




*燃えカスをつつくのかい* *今時烏だってそんな真似しないのに*
*それに死者は恥ずかしいだろうな* *僕はそう思う*
*骨って一番* *素肌じゃないか* *花と同じと言ってくれるなよ*




*生者の為と言うならば* *ううん*
*彼等には別れの儀式が必要なのだろうね*

*キミが* *そうなように*




*実感という* *区切りの形*
*手折る花* *鋏を入れて*




*知らせたい人* *いるんだ* *いや*
*もう* *いた・・が正しいのかもしれないね*

*僕等には* *別れの儀式が無かったな* *と思い返した*
*しょうがないよ* *火葬もされないだろうしな、彼*




*種は残るのかな* *風が吹けば*
*どこかへ攫われてゆくのかも* *どうだろう*

*花はひとりで* *どこかへ行けるものじゃないからさ*




*キミを苦しめ* *僕を割いた花* *僕がいた証明*

*僕はもう* *どこにもいない*
*僕の世界に* *キミがいないのと同じだね*




*寒い所は* *苦手なんだよなあ*
*けれどもキミが故郷で見た* *その花ならば*
*育つかもしれないね*

*それは虫でなく* *花なのだし*

*そう* *僕はここが好きだよ*
*何をしても怒られないし* *束の間の自由を味わって*
*キミもいたしさ* *まあ* *過去形になってしまう言葉だが*




*うん* *遠い遠くの* *色んな景色が見たいのも事実だ*
*それで* *広がると良いよね* *繰り返すと良いよね*

*会いたい人か* *難しいな*

*僕は泣いてしまうかも知れないし*
*その人も泣いてしまうかも知れないからね*

*──ああ* *ほら*


「くふ、」



*会わなくても* *泣いてしまったじゃないか*
*肩を* *声を震わせて* *子供みたいに*

*だから僕は* *意外にも今は* *笑ってしまうんだ*
*ああ* *愛されていたなあ* *って*

*その涙を* *傷口を伝ってゆく形を* *そう形容させてくれ*

*あの日の夜空* *散りばめた星を無理矢理繋ぐように*
*その目にしか見えない* *曖昧な形と* *させてくれ*

*そうすれば* *ほら* *いつか僕の流した涙も*
*痛みも* *悲しみも* *苦しみも*
*枕のシミも* *冷たい温度も* *鈴の音も* *詩の無い歌も*

*全部* *全部*


*愛みたいだろ*